100辞書・辞典一括検索

JLogos

36

迫山古墳群
【さこやまこふんぐん】


古墳時代後期の古墳群。深安郡神辺(かんなべ)町湯野字迫山に所在。第1号古墳は昭和58年7~8月に神辺町教育委員会によって発掘調査された。迫山古墳群は神辺平野北側に広がる丘陵端の山林中にあり,約10基の円墳で構成される。そのほとんどが横穴式石室を主体とする後期古墳である。第1号古墳は標高約75m(平地比高約60m)の丘陵端に近い尾根頂部から,南に少し下った傾斜面にある。墳丘背後の山腹面に大きな掘切溝を設け,その排出土を墳丘盛土に利用している。墳丘は直径約19m,高さは平野に面した南側が約5m,北側背後が約1mである。埋葬施設は平野方向を入口とする片袖式横穴式石室で,全長11.6m,玄室長6.4m・幅2~2.5m・高さ2.8~3m,羨道長5.2m・幅1.6~2m・高さ約2mである。玄室空間容積44.8m(^3),玄室床面積16.0m(^2)となり,県内では最大級の石室である。玄室床面には棺台とみられる30~50cm角の平石が散在するが,原位置を保つものは少ない。床面から人骨片・勾玉・切子玉・管玉・ガラス小玉,銅製耳環など装身具類,鉄刀・鉄鏃,須恵器などが出土した。これらの出土位置から数体以上の埋葬が想定できる。副葬遺物のうち,金銅装飾り大刀(単鳳型式の環頭柄頭,金銅製鞘金具をもつ),銀象眼の鍔をもつ大刀が注目される。第2号古墳は第1号古墳の上手にあり,半壊の横穴式石室が露出。第3~5号古墳は南西に張り出す山すそ近い尾根上にあり,第3号古墳は直径15m,高さ2.1mの円墳で,全長約6.8mの西向きの横穴式石室,第4号古墳は直径12m,高さ0.5mの円墳で,箱形石棺を主体とする。第5号古墳は直径11m,高さ0.5mの円墳。第6号古墳は半壊の箱形石棺をもつ。第7・8号古墳は山腹傾斜面にあり,第7号古墳は直径13m,高さ2.2mの円墳で全長8.4m,幅1.3m,高さ1.7mの無袖式横穴式石室,第8号古墳は半壊の横穴式石室が露出する。第9号古墳は山すそで南に張り出す尾根上にあり,直径19m,高さ2.6mの円墳で,全長11.6m,幅1.9m,高さ1.6m以上の横穴式石室。迫山古墳群は県内最大級の石室に装飾環頭付大刀を副葬した第1号古墳を中心に形成された,典型的な後期群集墳である。第1号古墳の被葬者は,有力農民層で構成された地方軍事組織の指揮官クラスの人物とみられる。いずれにしても,この地域における最有力農民層の家族墓群で,6世紀後半も末近い時期に築造された。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7189069