豊島大道
【としまおおみち】

中世，毛利氏の城下吉田から南へ山越えして，戸島川の上流部へ通じていた道。吉田の可愛(えの)川筋と戸島川筋を結んだが，戸島川は北東～南西の断層によって形成された河谷の一部で，逆に南西に向かう三篠川筋への連絡を容易にした。三篠川筋は太田川下流への展開や，上流部の谷坂峠を越えて別府(べふ)～乃美（現豊栄町）方面へ連絡し，その延長に西条（東広島市）や沼田川筋の本郷や三原があった。吉田は毛利元就の活躍とともに発展し，浜田路・石州路・安芸路などの大道が通じ，当道も古代から中世にかけての重要路の１つであった。古代の高宮郷は現在の吉田に比定されているが，その南の山麓に国司(くにし)（現吉田町）の地名があり，当道の起終点に当たる。吉田在の毛利氏は国司に国司氏，三篠川上流部の坂に坂氏，同中流部に三田氏を配して南を固めていた。当道は現在県道となっている。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7189927