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阿胡浦
【あごのうら】


歌枕として古歌にあらわれる浦名。「万葉集」に「あごのうらに ふなのりすらむ をとめらが あかものすそに しほみつらむか」とあり,「夫木抄」には「時つ風 ふかまくしらず あごのうみ あさけの塩に 玉藻かりてな」とあって,「あごのうみ」を摂津国か長門(ながと)国としている。長門国内に阿胡浦を比定する説は,たとえば,阿武郡阿武町の奈古説(防長名所図画),萩市の鶴江説,あるいはむかし阿胡の浜と呼ばれていたとの言伝えから萩市の菊ケ浜とする説などがある。天正15年,細川幽斎は豊臣秀吉を見舞うべく丹後国田辺城(京都府舞鶴市)を出発し,山陰海岸を経て九州に下向したが,石見から長門の「かり島」(阿武郡田万川(たまがわ)町付近)を通り過ぎてのち,船を止めて小畑(萩市椿東)の唐船を見物し,次いで阿胡浦を経て瀬戸崎(長門市仙崎)に至る。その時幽斎は「あこのうら波のたかくきこえければ」と題して「小つゝみのとうにしらべやあはすらん うつ音高し あこの浦浪」と詠んでいる(九州道の記)。従って適確な比定は難しいものの萩市近辺の浦を指す呼称であったと思われる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7191695