瀬戸内海国立公園
【せとないかいこくりつこうえん】

近畿・中四国・九州の和歌山・兵庫・岡山・広島・山口・香川・愛媛・大分の８県にまたがる国立公園。海岸線，山岳・丘陵，島々，河川・湖沼で構成される美しい景勝地で，交通網が発達し探勝の便は良い。昭和９年３月16日国立公園に指定された。県内の指定区域は面積5,731ha，開発等に規制がある特別地域3,497haと普通地域2,234haに分けられる。下関市・徳山市・防府(ほうふ)市・下松(くだまつ)市・光市・岩国市・柳井(やない)市・新南陽市，大島郡東和町・久賀(くか)町・橘町・大島町，熊毛郡上関町・田布施(たぶせ)町・平生(ひらお)町の８市７町が含まれる。大島郡では最高峰が久賀町の嘉納山（684.9m）で，その東に隣接し久賀町と橘町にまたがる嵩山(だけさん)（618.5m），北側の大島町の文珠山（662.7m）と同じく瀬戸内海の多島美を一望でき，遊歩道が整備され，登山・ハイキングに好適。嵩山山頂にはテレビ塔があり，ドライブも可能。文珠山西麓には周防岩屋文珠堂がある。東和町の白木山（374.3m）頂上には休憩所・駐車場が設けられ，中国山地や四国山地が遠望でき，眼下に片添ケ浜海水浴場や美しい島々が眺められる。鯛の峰は屋代島の東端近くにあり，山頂からの展望が良く，テレビ塔もたち，ドライブコースが設けられている。上関町の皇座(おうざ)山（526.7m）は室津半島の先端にあり，頂上までドライブウエーが通じ，頂上付近に牧場もあり，展望にすぐれている。光市の室積湾・峨嵋山（116.9m）・千坊山（298.7m）は風光明媚な恵まれた観光地で，峨嵋山樹林は国の天然記念物に指定されている。室積・虹ケ浜海水浴場には一夏85万人の海水浴客が訪れる。下松市の笠戸島は全島が国立公園指定区域であり，海岸線は出入りの変化に富み，奇岩が点在する。昭和45年に笠戸大橋が完成し，宿泊地・キャンプ場・遊歩道・海水浴場等が整備された。徳山市の太華(たいか)山（362m）は徳山湾に突き出した大島半島に位置し，頂上には展望台・不動明王堂・与謝野鉄幹歌碑があり，ドライブウエーが整備され，頂上から周南工業地帯が一望でき，遠く九州国東(くにさき)半島や瀬戸内海の多島美が展望できる。下関市の火の山（268.2m）は，頂上までロープウエー・パークウエー・遊歩道による３コースが設けられている。山麓に宿泊施設，頂上には回転展望台・食堂等の諸施設が完備している。頂上からは関門海峡・関門橋・周防灘・響灘等が展望でき，特に夜景の眺めは素晴らしい。下関長府沖合いの満珠(まんじゆ)・干珠(かんじゆ)の２つの小島は，忌宮神社の神域で，美しい樹林に覆われている。公園区域の温暖で降水量が少ない瀬戸内型気候は，交通の便とともに探勝・観光・行楽を容易にしている。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7193363