100辞書・辞典一括検索

JLogos

10

大麻比古神社
【おおあさひこじんじゃ】


鳴門市大麻町板東にある神社。延喜式内名神大社。阿波国一の宮。旧国幣中社。祭神は大麻比古大神・猿田彦大神。大麻(おわさ)さんの名で親しまれる。阿波国一の宮として,また阿波・淡路両国の総産土神として国司・領主をはじめ,広く崇敬を受けた。大麻山麓に位置する。社伝によると,祭神大麻比古大神は忌部氏祖天太玉命と同神とされる。神武天皇の時に天太玉命の子孫天富命が阿波国を開拓,守護神として天太玉命を祀ったという。また猿田彦大神は大麻山の峰に鎮座していたのを合祀したと伝える。しかし中世の「大日本国一宮記」(群書2)や吉田兼倶が文亀3年に記した「延喜式神名帳頭註」(同前)ではいずれも祭神を猿田彦命とする。また「大麻彦神社伝来書上帳」(続徴古雑抄1)や「大麻山旧蹟秘録」(鳴門市史)でも「祭神猿田彦大神」とあり,明治以前は猿田彦大神を主祭神と考える説が強かったようである。「三代実録」によると,貞観元年正月27日に従五位下から従五位上へ,同9年4月23日に正五位上,元慶2年4月14日に従四位下,同7年11月朔日に従四位上へ叙されている。また「延喜式」神名帳板野郡条では「大麻比古神社〈名神大〉」とある。承暦4年6月10日の神祇官御体奏では御在所平安のために祓いを行う神社の1つに「大麻神」の名が見える(朝野群載)。永万元年6月日の「神祇官諸社年貢注文」の阿波国条に「大麻社〈炭五十籠 薪五十束 為縄三尺五寸〉」とあり,炭・薪などを年貢として納めるよう神祇官から割り当てられている(永万文書/愛媛県史資料編古代・中世)。歴代領主が崇敬を寄せ,室町期には細川・三好両氏,江戸期には徳島藩主蜂須賀氏が神田や山林などを寄進,また社殿の造営・修復を行った。享保4年には正一位に進んだという。寛保神社帳には「板東村 一宮大麻彦神社〈式大社〉別当板東村霊山寺 本願同実永院 神主同板東石見・永井若狭」とみえる(続徴古雑抄1)。明治6年国幣中社に列格。現社殿は昭和45年に明治維新百年の記念事業で改築されたもの。方除け・交通安全の神として知られ,県内外より一年中参拝者がある。例祭は11月1日。また旧正月には神迎祭,2月の節分当日に神火祭,旧暦3月12日に湯立神事,旧暦7月16日・17日に奥宮大祭など特殊神事も多く行われる。参道の松並木は樹齢500~600年の古松が300本ほどあり,県天然記念物に指定されている。境内裏の丸山公園にかかるドイツ橋は,第1次大戦で捕虜として板東に収容されたドイツ兵が作ったものである。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7195382