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島ケ峰牧場
【しまがみねぼくじょう】


仲多度郡琴南(ことなみ)町川東の島ケ峰付近にあった牧場。標高800~980mの南向きの斜面43haに,肉用牛の山地放牧を目的につくられた。琴南町は讃岐山脈の奥深くにあるため,その産業は農業が中心で,当牧場が所在した南部の美合地区は,平地に乏しく水田の開発が困難であるため,昔から畑を利用して雑穀・麦を中心に野菜・煙草の栽培を加えた経営が行われてきた。農作業の機械化が進んだ昭和30年代の中ごろから県全体の牛の飼育は減少し,肉用牛中心の多頭飼育が盛んになった。山村の振興と畜産公害を防ぐ目的で,山地放牧が注目され,各地で小型牧場が開発された。美合地区の牛の飼育情況は,昭和30年の農業センサスによると,375戸の農家が381頭の牛を飼い,多頭飼育は見られなかった。過疎化現象の現れはじめた琴南町においても,昭和32~33年に土地利用総合開発調査を実施,この結果をふまえて美合地区川奥の早壮年期の山地斜面にある島ケ峰財産区の所有林に8,400万円の費用を当て草地改良事業を行った。こうして島ケ峰牧野組合が誕生し,自主運営に乗り出した。牧場の規模は,牧道3線(6.6km),牧柵15km,畜舎2棟(660m(^2)),管理棟1棟,用水施設,草地管理用機械などを備えたものであった。高地のため夏冷涼で,土壌は粘土質なので北方系のオーチャードグラス・ケンタッキー・イタリアンライグラス・クローバー・ルーサンなどの牧草を植え付けた。受益農家は,牧場に近接した株切・沖野・川奥・横畑の4集落39戸であった。肉用牛95頭の放牧からはじめ,2年後には繁殖牛200~240頭,肉用牛40頭,育成牛150頭,年間肉用牛40頭,子牛150頭を生産・販売する計画であった。ところが技術の未熟さや資金不足のため,経営に行き詰まり,昭和44年から4年間の期限つきで町が運営することになったが,経営は軌道に乗らなかった。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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