100辞書・辞典一括検索

JLogos

15

瀬戸内海国立公園
【せとないかいこくりつこうえん】


東は和歌山県から西は大分県の9県にまたがる瀬戸内海沿岸の国立公園。面積は海域を除き6万2,951ha,うち本県指定面積1万6,088ha。昭和6年にできた国立公園法により同9年3月,わが国で最初に指定された3か所の国立公園のうちの1つ。東は鳴門海峡と紀淡海峡,西は関門海峡と豊予海峡に限られた瀬戸内海の範囲内の景勝地を指定したもの。最初は岡山・香川・広島3県にまたがった範囲が指定され,その後何回も拡張指定が繰り返されて,現在の広がりに達した。指定地域は主に島や海岸の陸地部に限られているので現在の指定面積は6万2,951haであるが,海域を含めれば日本一の公園となる。内海はその自然美と史跡・寺社・伝説などに富み,万葉の時代から数々の秀歌に詠われてきた。100年前ドイツの地理学者で中国研究家として世界的に知られるリヒトホーヘンは,明治元年アメリカから神戸~瀬戸内海経由で中国へ渡った時の「支那旅行記」の中で「世界で最も魅力のある場所の一つとして高い評判をかち得,多くの人を引きつけるであろう」と賞賛している。内海の自然美は晴天日数が多く,花崗岩からでる長石・石英・白雲母によって形成される白砂の海岸,加えてメサやビュートの変化に富む島々の多島美に代表される。主な景勝地は東から鳴門の観潮,友ケ島などのある紀淡海峡,六甲山塊・明石海峡・家島諸島,そして当公園のハイライトである備讃瀬戸海域で,この海域には小豆島の寒霞渓,屋島古戦場,人名の島塩飽(しわく)諸島,鷲羽山の展望台,金刀比羅宮神域,荘内半島などがあり,本県関係が多い。さらにこの海域には近く超近代的建造物として児島と坂出(さかいで)を結ぶ瀬戸大橋が架かる予定。本県の指定面積は全公園面積の約24%,全県面積の9%を占め,伊吹島を除くほとんどの島が指定を受けている。さらに西に進んで来島海峡や大山祇神社など村上水軍の史実に富む芸予諸島,さらに防予諸島と続き,平家滅亡の悲話の絡む関門海峡そして別府温泉に至るまで,実に多様な魅力に富む。一方では日本経済の高度成長とともに瀬戸内海も1つの工業地帯に成長,特に素材系の一大重化学コンビナートが水島・大分鶴崎を筆頭に,福山・徳山・新居浜・播磨・広島湾・番の州などに大集積を展開,昭和40年代になると,各種の公害が続発し,さらに5,500kmといわれる内海総海岸線の60%がコンクリートの人工海岸で占められるようになり,かつての白砂青松の自然海岸は数える程度になっている。昭和48年瀬戸内海環境保全臨時措置法ができ,埋立てによる開発や汚水の排出などが厳しく規制されるようになった。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7198898