100辞書・辞典一括検索

JLogos

9

足摺宇和海国立公園
【あしずりうわかいこくりつこうえん】


県南西部から愛媛県南部にまたがる国立公園。昭和30年4月1日指定の足摺国定公園を主体として昭和47年11月10日に指定された。このうち高知県に所在する地域は2市1町に及び,足摺岬を中心に土佐清水市東部の在岬北部から幡多郡大月町勤岬に至る海岸線と,豊後水道南東部付近に点在する宿毛(すくも)市沖ノ島・鵜来(うぐる)島・姫島の各島嶼および県境の篠山(1,064.6m)からなり,面積1万967ha,うち本県域5,935haである。海岸地域のうち東部は隆起海岸,西部は沈降海岸からなる。東の在岬から足摺岬を経て竜串付近までは海岸段丘が発達し,西は海岸線が大小の出入りに富み,叶崎・樫西海岸・大堂海岸・柏島・沖ノ島などの島・岬・岩礁に恵まれ,変化の多い海岸景観をなす。また足摺岬・叶崎・大堂海岸・沖ノ島など外洋に接する部分は海食を受け,数十mから100mに及ぶ雄大な海食景観を呈する。これらの地域の基盤岩石は足摺岬,柏島,大堂海岸の一部,蒲葵島・沖ノ島は花崗岩で,方状節理が海食を受けた特色ある景観を呈する。ほかの地域は白亜紀四万十川層群須崎層・第三紀始新世清水層・第三紀漸新世三崎層に属する砂岩・頁岩からなり,岩質や層理に応じた風食や海食を受け竜串などにみられる奇岩・奇勝を形成している。内陸部に飛地的に指定された篠山は,愛媛県と本県の県境にまたがり,地質学上の四万十帯に属する。黒潮の影響を受け,温暖多雨の気候条件の当地域の植生は,温帯南部~暖帯特有のヤブツバキクラス域のうち,シイ~タブ林域に属する植生型が支配的で,クロマツ・スダジイ・タブノキ・カシ類が高木層をなし,中~低木層にウバメガシ・トベラ・ハマヒサカキ・マルバシャリンバイ・ヤブツバキ・マサキ・タイミンタチバナなどが主体となる。また,アコウ・ビロウ・リュウビンタイ・クワズイモなど亜熱帯植生が足摺岬・蒲葵島・姫島・鵜来島・沖ノ島などにみられ,沖ノ島は特に顕著である。当地域の植生のもう1つの特徴は,強風地域の低木林の風衝樹形(マキ群叢)にあり,雄大な海食崖に一段と趣きを添える。内陸部の篠山山頂一帯は暖帯山地の自然林が残され,コウヤマキ・ハリモミ・ツガの巨木をはじめ,アケボノツツジ・トサミツバツツジ・シャクナゲなどの群落があり,ミヤコザサが一帯を覆っている。そのほか特殊景観として,大堂山付近一帯にニホンザル,蒲葵島にカラスバト・オオミズナギドリやウミウなどの海鳥類の生息がみられる。なお,本県域は国の特別天然記念物のニッポンカワウソの生息地として特別な保護が加えられている。暖かい黒潮の影響により,沿岸一帯は,造礁サンゴ類・熱帯魚類など多くの海棲生物に恵まれ,透明度も20m前後とよく,海中景観も優れている。そのなかでも土佐清水市竜串地区,大月町樫西地区,宿毛市沖ノ島地区の姫島・水島・三ノ瀬島・室碆は特に優れ,昭和45年7月1日竜串地区が海中公園に指定されて以来,同46年1月22日,足摺国定公園の時代に足摺海中公園区として指定され,同47年国立公園発足後,樫西地区(2か所)・沖ノ島地区(5か所)・竜串地区が公園内の海中公園地区に再指定された。足摺岬・竜串・大堂海岸などが観光拠点となり,訪れる観光客も多く,阪神方面からはあしずり港(土佐清水市)へフェリーが通じている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7203796