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天忍穂別神社
【あまのおしほわけじんじゃ】


香美郡香我美町山川にある神社。延喜式内社。旧県社。祭神は正哉吾勝勝速日天忍穂耳尊・栲幡千千姫大神。相殿に饒速日尊を祀る。古くは石舟大明神などと称した。創祀年代は未詳であるが,「和名抄」香美郡条に物部郷が見えるように,当地は古代物部氏の根拠地で,物部氏がその祖神を祀ったものと考えられる。また饒速日尊は父の天忍穂耳尊を慕って,はじめ河内国に天降り,そこから石船に乗って香美郡上岡山(現野市町)に移り,さらに当地に遷座して相殿に祀られることになったという。「延喜式」神名帳香美郡条の「天忍穂別神社」に比定される。正和4年社殿が造営され,その時の棟札に「御石舟社」の社名と「物部末近」の名が見える(蠧簡集)。また元亨4年の政所下知状によると,「御灯明御水并御花米」などの神事役を懈怠なく勤仕することを命じ,物部氏の禰宜職を定めている(同前)。天正6年にも社殿が造営され,檀那として物部末延の名が記されている(棟札銘/同前)。このように長く物部氏との関係が続いたと考えられる。天正16年の大忍荘山川他二十八村地検帳によると,山川村に「御石舟宮床」として15代のほか,末延村に「石舟宮ヤシキ」「石舟修理テン」などが見える。近世には15代の社地を有し,宝永2年に「土佐国式社考」の著者谷秦山が視察して以来,現在の社名を称えるようになったという(南路志)。明治維新後県社に列格。境内に饒速日尊が乗って来たという伝説をもつ舟形の石(石船)があり,石舟大明神の社名もこの石にちなむといわれる。古くから疱瘡の神,海上安全守護の神として信仰されている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7203837