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おほみなと
【おおみなと】


「土佐日記」に見える湊名。「土佐日記」の承平4年12月28日の条に,「廿八日。うらど(浦戸)よりこぎいでて,おほみなと(大湊)をおふ(追)」「廿九日。おほみなと(大湊)にとまれり」とある。年明けて,承平5年の1月8日の条には「さはることありて,なほおなじところ」にとどまり(古典大系),9日の朝,ようやくのことで紀貫之たちの船は大湊を出発している。元日を挟んで実に10日間,貫之たちは海路の日和,安泰を待って大湊に滞在したのだが,大湊の地名は,その後の文学作品・歴史史料類などには見えない。比定地については江戸期から論争が絶えず,前浜・十市(とおち)(以上南国市),夜須・手結(てい)(以上夜須町),種崎・池(以上高知市)などが推定地としてあがり,なかでも前浜説が最も有力である。前浜は香長平野の南東部に位置する農漁村で,南は土佐湾を望む。江戸期の儒者戸部良煕は,この大湊(前浜)のみやびにひかれてこの地を訪れ,美しい石を拾い,「大湊今もむかしによる波の浜のまさごはかくとしもしれ」(大湊紀行)の歌を作った。なお,明治7年3月,江藤新平らは追手を逃れて,この前浜のモミジ屋で一服してから,久枝にかかり,久枝の渡しで物部川を船で吉川村に渡り東行している。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7204551