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幡多山地
【はたさんち】


県の南西部。中村市・宿毛(すくも)市・土佐清水市などを中心に幡多郡一帯に広がっている山地の総称。北部の四国山地のように構造線に沿った東西方向性の秩序をもった山地ではなく,基盤地質の大部分は地質学上の四万十帯に属する比較的低い山地のまとまりを欠く塊。その間を四万十(しまんと)川とその支流,その他の小河川が網目のように流れているが,四万十川支流,中筋川など若干の例を除いて,広い河谷にも恵まれていない。宿毛湾から大方町南部に至るほぼ東西にのびる中筋地溝帯を中心に北部と南部の山地に大別される。さらに,北部の山地をいくつかの山塊に分けると,東部には高岡郡中土佐町久礼南部の,窪川町との境にある火打ケ森(590.3m)から,窪川町南部の,幡多郡佐賀町との境にある五在所の峰(658.0m),さらに幡多郡大方町北部の,中村市との境にある仏が森(687.2m),中村市東部の,幡多郡大方町との境にある石見寺山(410.9m)に至る低山性の火打山脈が北東から南西に走り,太平洋岸と渡川(四万十(しまんと)川)水系との分水嶺をなし,その西側,松葉川(四万十川上流の部分称)と支流檮原(ゆすはら)川との間には鈴が森(1,053.9m)山地が南北に連なり,檮原川と愛媛県北宇和郡に流域をもつ吉野川(広見川)との間には雨包山(1,111.4m)・高研山(1,053m)を主とする県境山地が広がっている。幡多郡西土佐村北西には愛媛県宇和島市南東の鬼ケ城山(1,151m)から,ほぼ南東にのびる3つの山列がある。鬼ケ城山から梅ケ成峠~高月山(1,228.8m)を経て吉野川と目黒川の間にのびる山列,鬼ケ城山から三本杭(1,225.7m)を経て目黒川と黒尊川の間にのびる山列,鬼ケ城山から大黒山(1,105.8m),中村市北部のほけが森(751.3m)・鍋が森(635.1m)・大塔山(383.0m)・高森山(331m)を連ねる山列で,四万十川支流の目黒川・黒尊川は同じ方向の構造谷を流れている。四万十川と支流後川との間には堂が森(856.9m)を主とした堂が森山地がわだかまり南部へ3つの尾根をのばしている。西尾根は四万十川沿いに南下し,中村市街地北西の為松山に至っている。宿毛市松田川の西岸には篠山(1,064.6m)を主峰とした県境山地が広がっている。中筋地溝帯の北岸には国見断層に沿って,中村市具同の高森山(331m)から宿毛市,松田川西岸の新城山(302.8m)を経て宿毛湾に至る東西方向の低い山列があり,西端に松尾峠がある。中筋地溝帯以南の山地には,地溝帯南岸の江ノ村断層に沿って東西に走る貝ケ森山地があり,幡多南部と北部との交通障壁となっている。東部に伊豆田峠があり,西部の宿毛市黒川付近では中筋川上流の横谷がみられる。さらに南には今ノ山(864.6m)山地があり,その間には三原盆地が広がっている。今ノ山山地の東南尾根は足摺(あしずり)半島を形成し,西尾根は三原南西部,宿毛市南部の中畑山(455.1m)を経て大月町の宿毛湾沿いの山地を形成しながら,海に入り,沖ノ島などの島嶼に続いている。幡多山地は北部の県境付近で標高約1,000~1,200mの高さを有しているが,南に向かって低下し,標高約400~600mとなっている。一般にこの地域には標高約500~1,000mの高さを有する平頂峰が発達し,これは,この地域が曲隆運動後に浸食を受けたものと考えられる。平地に恵まれないため,水田など耕地も少なく,桑園・茶園などの利用に特色が若干みられるほかは,一般に農業も不振。国有林なども多く,林業が盛んで,かつては薪炭生産も盛んであった。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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