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糟屋西郷
【かすやさいごう】


旧国名:筑前

(中世)平安末期~戦国期に見える郷名。筑前国粕屋郡のうち。寛弘2年11月15日の筑前国符案によれば,筑前国は「糟屋西郷司」に対して先に収公した観世音寺呉楽徭丁代としての「早良郡田捌町肆段」を糟屋西郷内の同等の田積の地と交換するよう命じている(内閣文庫所蔵文書/平遺442)。「郡宜承知」の書止文言に示されるように,糟屋西郷が郡として扱われており,当郷が粕屋郡を東・西に分けて成立したことが推定される。治安2年2月20日の筑前国符にも当郷が見える(石清水文書/同前486)。「吾妻鏡」文治3年8月3日条によれば,当郷は,平氏に味方していた筥崎宮司親重に源頼朝から安堵されている(田村大宮司文書/筥崎宮史料)。南北朝期の正平17年8月28日の惣官沙弥某下知状によれば「糟屋西郷内中原田地参段〈柿木〉」を神領興行のために筥崎宮司に返付する旨の命が出されており,大宮司家の支配が続いたものと考えられる。同21年4月日の執行成貞注文によれば,筥崎宮の若宮仮殿遷宮の饗膳に際して,当郷は「参斗」の米を負担することになっている(石清水文書/同前)。戦国期の明応3年4月21日の筥崎大宮司分要脚注文にも,当郷分として「中原分」「戸原村」が見えるものの(田村大宮司文書/同前),文明10年10月の筥崎宮神事用途注文では当郷をふくめて「無沙汰闕怠」が指摘されており,次第に筥崎宮の支配は衰えていったものと考えられる(石清水文書/同前)。現在の粕屋町仲原・戸原をふくむ粕屋郡西部一帯に比定されるが,正確な郷域は未詳。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7210051