北大淵
【きたおおぶち】

旧国名:筑後

矢部川上流右岸に位置し，北は笠原山塊に続く。地名の由来は矢部川と支流剣持川が合流する地に大きい淵があることによるという。日向神渓谷の入口にある日向神大明神（平安前期の創建という）の神書に，木花開耶姫がこもったという御産所を穿室（字空室(うつろ)）とある。古語で「宇津呂」は地溝状の谷，谷の奥づまりの地の意で，地形と一致する。お産のとき敷いた物を子敷岩屋に捨てたといい，字古敷岩屋の地名がある。全家楠姓を名のり，南北朝期の楠木氏の子孫と伝える。塔の下に室町初期の宝篋印塔数基があり，五条氏関係のものであろう。矢部川の北岸沿いに坊名や修験道場の跡，廃寺跡がある。廃寺の辻堂に残る木造薬師如来座像は，文亀３年博多仏師院徳の作，大檀那は黒木城主父子である。
【北大淵村(近世)】　江戸期～明治22年の村名。
【北大淵(近代)】　明治22年～現在の大字名。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7210602