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孔大寺山地
【こだいじさんち】


遠賀(おんが)郡岡垣町と宗像(むなかた)市および宗像郡玄海町の境界をなす山地。四塚連峰・宗像山地ともいう。主峰の孔大寺山をはじめ,城山・金山・湯川山など,標高300~500mの山が連なり,その山頂はほぼ南南東―北北西方向に続く。玄界灘の地ノ島もこれらの延長線上に位置する。山地全体に,標高150~200m付近に傾斜変換点が見られ,急傾斜の山腹斜面に対し山麓の緩斜面が好対照をなす。急斜面が中生代白亜紀の関門層群からなるのに対し,山麓緩斜面は花崗岩が分布する。なお,玄海町の西端にあたる神湊の西に突出する小規模な草崎半島も,標高81.5mを最高とする4つのピークからなるため四塚とも呼ばれ,沖合いの勝島をも含めて孔大寺山地と並行するものであり,三郡山地北端と考えられる。孔大寺山の名は,山頂に大穴があることにちなむといい,「宗像縁起」に「昔は彼穴の口に棚を構へ,未婚女を生贄とするに,神出でて白馬の形を顕し,或は大蛇の相を示して其女子を食給へり」と見える。伝教大師(最澄)渡唐の折,参詣して法施を垂れてから邪神が現れなくなったといい,以後供養のため,孔大寺神社の祭礼には,法華経を読誦すると伝える。英彦山や宝満山と並んで,宗像郡内では天蓋山とともに山伏の修験道場であり,峰入り行事が盛んであり,山麓には堀坊・仙岳坊・円城坊などの字名や坊跡が残る。孔大寺神社は杉や銀杏の老木が鬱蒼と茂り,孔大寺杉として知られたが,第2次大戦中に伐採された。残された神木の大銀杏は,昭和31年に県天然記念物に指定された。かつて里人は,この神木の黄葉の様子で,麦の播種期を予測した。連峰南端の葛ケ岳は,宗像六岳の1つで,戦国期に宗像大宮司氏俊が城を構えたことから,城山とも呼ばれた。山頂近くまでカゴノキ・クスノキ・ヤブツバキなどの照葉樹に覆われ,ムクロジをはじめハナカズラやトモエソウの群落も見られる。駒返しの跡が残る山頂には,石組みの沖ノ島遥拝所や灯籠があり,玄界灘に浮かぶ島々はもとより,北九州の皿倉山,シダ類の宝庫である西山や筑豊の山並みなど,雄大な風景が展望できる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7211166