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背振山
【せふりさん】


福岡市早良(さわら)区と佐賀県脊振村の境界にある山。「せぶりやま」ともいう。標高1,055.2m。背振の語源は,朝鮮語のソウル,すなわち国の真中,国の都に由来するという説があり,また弁財天が乗ってきた馬が,背を振ったから背振山となったという地名俗説もある。また,筑紫の脊髄であり,頭脳あるいは心臓を表すともいわれ,背を脊とも当てる。山頂には弁財天を祀る脊振神社がある。昔,役の行者が豊前国英彦山から宝満山を飛び越えて背振山に降り,頂上直下の竜池の岩窟に籠って修法したという。密教を信奉する修験者の山岳信仰の山として,背振千坊と称され,英彦山と同じく修験道場として栄え,その痕跡が山中に残る。また一説に,臨済宗の祖栄西が,中国の宋から持ち帰った茶を,背振山麓にまいたのが日本での茶の栽培の始まりとされ,「日本最初之茶樹栽培地」の石碑が,佐賀県東脊振村霊仏寺門前にある。背振山は,大陸から筑紫に渡来する漢人あるいは韓人にとって玄界灘を渡る唯一の航路目標であり,福岡市側から見る山容は円錐形で,花崗岩類からなり,北面は急峻で深い谷を刻む。南の佐賀県側は緩やかな斜面が続く。福岡市側の板屋峠から山頂に至る,標高約800m以上の天然林約150haにはアカシデを主体とするシデ林,山頂付近などにブナ・ミズナラ・アカガシ・クマシテジを主体とするブナ林が分布。このブナ林は,往時のブナの残存林で,林床はミヤコザサに覆われる。山頂から西に延びる稜線と支尾根にはミツバツツジやシャクナゲが見られる。背振山は,西北西と東南に長大な尾根を延ばして背振山地を構成,西端は唐津湾に至る。山頂からは阿蘇・雲仙・英彦山などが眺望でき,南の有明海,北の玄界灘を眼下に納める。四季を通じて登山者が多く,福岡都市圏の行楽地になっている。現在,山頂の神社に隣接して航空自衛隊の防空レーダードームがそびえ,西方約1kmに福岡管区気象台の背振山レーダーもある。近年,春先から夏にかけ自家用車による登頂者が増加。背振雷山県立自然公園に属し,九州自然歩道が通る。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7212190