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那津
【なのつ】


旧国名:筑前

(古代)奈良期に見える地名。筑前国那珂郡のうち。那津の「那」とは,1世紀から3世紀にかけて福岡平野一帯に存在した奴国の名残であり,那津とは那地方の海岸部にあった港を意味している。「日本書紀」宣化天皇元年五月辛丑条によれば,大和朝廷は那津の口に官家を修造し,各地の屯倉の米穀をここに集めて,非常に備えた。翌年十月壬辰朔条によれば,任那遠征に出かけた大伴狭手彦の兄磐は筑紫に留まり,九州の内政をみて,朝鮮半島の緊張した情勢に備えた。この大伴磐が滞在したのも那津官家であったとされる。このように,那津官家は内政・外交の要所であったのである。那津官家の位置は,従来,那珂川中流域にある南区三宅の地に比定されていたが,最近の発掘調査の成果にもとづき,博多区比恵遺跡にあてる考え方が出てきた。「日本書紀」斉明天皇7年3月丙申朔庚申条によれば,百済救援を名目として九州に下向した斉明天皇は,娜大津(なのおおつ)に到着し,その名称を長津と改称した。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7213429