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引津湾
【ひきつわん】


糸島郡志摩町の糸島半島西岸にある湾。可也の海ともいう。南を陸繋島の船越半島,北を玄界灘からの北西季節風を防ぐ立石山の山脚に囲まれ,湾口は南西に開く。湾奥に岐志と新町の漁村がある。引津の名の由来は,かつて岐志と北方の玄界灘に面する芥屋の間が海で,潮が両方へ出入りしたからとも,干潮などの時に外海へ船を引き出したからともいう。「万葉集」巻第10に「梓弓引津辺にある莫告藻の花咲くまでに逢はぬ君かも」と詠まれ,巻第15には「引津亭舶泊之時作歌七首」がある(古典大系)。引津の亭は奈良期に遣唐・遣新羅使節の一行が博多の津から朝鮮半島へ向かう際の経由地で,引津湾の岐志付近にあったとされる。「続風土記」では「船越の西北,竜王の社の方より見たる景いとよし。丹後の与謝の入海,武蔵の金沢の入海といふとも。是に過べからす」と,御床松原から船越半島の陸繋砂州へ続く砂浜の景色を讃える。御床松原は大正6年に弥生土器とともに中国の王莽の貨泉が発見され,弥生時代が西暦前後に相当することが証明された。岐志漁港は埋立てによる漁港整備事業が漁村センターを中心に進み,また姫島への町営定期船も発着する。湾内では昭和41年に始まったタイの養殖が盛んで湾の南北の丘陵地は,会員制別荘地として分譲される。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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