福智山
【ふくちやま】

北九州市小倉南区,直方(のおがた)市,田川郡赤池町の境界にある山。標高900.8m。山体は古生層の堆積岩類である秩父類層群からなり,古生代末から中生代初めにかけて貫入した変斑糲岩が山頂付近を覆う。皿倉山から香春岳に至る福智山地の最高峰で,山頂からの360°の展望が開け,眼下に遠賀(おんが)川流域の沖積平野,玄界灘から三郡山地・英彦山山地が遠望できる。山頂一帯から南東の尾根部分はクマイザサやススキに覆われた草原であり,部分的に巨岩が散在する。山頂北斜面の避難小屋荒宿荘は九州自然歩道近くにあり,付近の岩間から湧き出る清水はタヌキ水と呼ばれ,年中かれることはなく,登山者に貴重な水を提供する。山頂近くの2つの祠には石仏が安置され,彦山修験道の末山の1つとして山伏の行場の痕跡をとどめる。かつて,山中に12の僧坊があったといい,養老7年に悲母観音を彫って安置したとの記録がある。尺岳への尾根線西側はスギの人工林,東側はシデ・アカガシ・ケヤキなどの自然林が水源涵養林として残され,多くの野鳥や昆虫が生息,また渡鳥の中継地ともなっている。北九州自然休養林・北九州国定公園の中心として,四季を通じて多くの登山者に親しまれている。登山路は,西側からは,直方市からの大塔ノ滝のある内ケ磯渓谷コース,赤池町からの白糸ノ滝のある上野(あがの)峡コースがある。東側からは小倉南区頂吉から鱒淵ダムを経て南西へ登るコース,七重ノ滝・豊前越で登るコースがある。しかし,畑観音や菅生ノ滝を経由して自然歩道に入り尺岳経由で縦走する登山者が多い。

![]() | KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7214372 |





