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上見坂
【かみざか】


下県(しもあがた)郡厳原(いずはら)町と同郡美津島町との境界にある峠。厳原町厳原の北方約4kmに位置する。標高388m。俗称「かめざか」,亀坂とも書く。古来国府(厳原)より雞知(けち),洲藻(すも),加志(かし),阿連(あれ)の各方面へ通じた山道の峠で,東に対馬海峡,西に朝鮮海峡を展望し,眼下に浅茅(あそう)湾の入江,その向こうに上県郡の山並みを眺める風景は島内有数の名勝とされ,上見坂の名もこれによって起こったものともいわれる(津島紀事)。現在は上見坂公園と称し,壱岐対馬国定公園に含まれる。「万葉集」巻14に,「対馬の峰は下雲あらなふ上の峰にたなびく雲を見つつしのはも」とある歌の,対馬の峰を有明山に比定し,上(可牟)の峰を賀部岨(かぶそね)に比定した説がある(津島紀略)。賀部岨は上見坂の南に続く山の名で,古代には烽があったともいわれている。この上の嶺を「神の嶺」と解し,上見坂も本来は神坂ではなかったかと推測できる。また峠の東側の谷にある在庁落しという地名は,寛元4年宗重尚が,対馬在庁の権力者であった阿比留氏を討った古戦場にちなむという(津島紀事・対馬島誌)。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7220234