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鷹島元寇遺跡
【たかしまげんこういせき】


中世の遺跡。北松浦郡鷹島町に所在。鷹島の南部海岸に沿った広大な区域にある。昭和56年7月20日遺跡発見届を文化庁に提出して,特殊な水中遺跡として認定された範囲は広く,東は鵜ノ鼻より西は雷岬までの約7.5kmにわたり,汀線より200m沖合い,水深約20mの範囲に及ぶ。鎌倉期にこの小さな島への2度にわたる蒙古軍の襲来(文永11年・弘安4年)はよく知られており,壺・刀剣類や碇石などの沈没品が漁などにより多数引き揚げられている。なかでも住民により採集された銅印は,弘安の役により沈没した蒙古軍の中隊長クラスの所持品であったと推定されている。印面には元の国語であるパスパ文字で「管軍総把印」と刻まれ,側面には「至元十四年九月造…」と刻まれている。昭和55~57年東海大学茂在寅男を研究責任者に文部省の助成を受けた「水中考古学に関する基礎的研究」の実験調査が水中考古学研究グループにより,この海域で行われ多くの実績をあげている。昭和58年には,同町床浪港改修工事に伴い総合的な海底発掘調査が町床浪海底遺跡発掘調査団(荒木伸介団長)により行われた。海底の基本層序は4層に区分され,遺物包含層は第2層下部から第3層上面にかけてに限られ,出土する陶磁器類には付着物もほとんどなく,また磨耗もしていないことから比較的短時間に埋没したものと考えられている。船体の残存はない。出土遺物には,陶磁器類のほかに獣骨・木片などがある。これらの陶磁器類には,褐釉壺1,黒褐釉壺2,青磁碗1の完形品がある。これらは南宋末から元代にかけて製作されたもので,難破した蒙古軍の携行品の一部であろうと推定されている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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