豆酘内院
【つつないいん】

旧国名:対馬

古くは内院・西内院ともいった。対馬の南端，内院川の右岸に位置する。北は竜良山より東方萱場山に連なる山嶺，西は竜良山より南方に直走する峻嶮な山脈で，その南端は原生林に覆われた神崎，内院浦西岬の松無崎となる。竜良山から流れ出る内院川が平地を左右に分け，左岸は与良内院と称する。内院の地名由来は，古くは神功皇后が朝鮮に行く際に当地の浦に泊まったということから船を意味する浮津をつけて浮津浦と称したと伝えるが，後に豆酘神社境内の意味から内の字，庁院が置かれたという意味から院の字が加わり，内院となったと伝える（津島紀事）。ただし，当地に庁院があったという確証はない。貞享年間の神社誌には内院久保小路村として「新正八幡宮，神体阿弥陀なるを以，八幡の本地は弥陀と云説を用て，正八幡とすと云，俗説，不可有用也……一，右宮ヨリ十八間午方ニ当テ大石塔有，天道母公之塚と云俗説有，無拠不可考」とあり，対馬国固有の神道として発展した天道童子（法師）の生誕地とされている。この天童誕生の聖地を有浦というが，「あり」は「誕(あ)れ」とする見方もできる。神社の南の丘にタッチョウと称する霊地があり，森の中に素朴な石の祠がたち，タッチョウは塔頭(たつちゆう)（仏教で高貴な人の墓）と推論され，天道童子の母の墓所とする所伝がある。正八幡の大石塔は安徳天皇の陵墓伝説に変わっていたが，最近の学説は南北朝期の形式の宝篋印塔で，武藤頼忠の供養塔と見なされている。塔は町文化財に指定されている。この東の丘には多数の五輪塔がある。なかに応永７年の年号を刻んだものがあり，少弐氏に従った者の墓とされている。またこの地に照日長者の伝説があり，その娘が日光に感精して天童を身ごもったという（津島紀事）。また，一説には，神崎の大子瀬に漂着した「うつろ船」に乗っていた女（内院女御）が朝日に尿して身ごもったのが天道童子であるという。中世には与良内院と合わせて「内院」と見える。
【豆酘内院村(近世)】　江戸期～明治41年の村名。
【豆酘内院(近代)】　明治41年～現在の大字名。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7221711