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らかん橋
【らかんばし】


長崎市郊外,間の瀬川に架かっていた橋。市内平間町の,滝ノ観音境内に架かっていた。橋長5.8m,幅員2.0m。径間(アーチのさしわたし)5.6m,拱矢(アーチの高さ)2.5mの小さな太鼓型アーチ石橋で,創建は中国人の許登受である。彼は貿易のため再々来朝したが,万治2年に渡来の途中東シナ海で暴風雨に遭い,船がまさに転覆せんとしたとき滝ノ観音が荒天に現れ,嵐を静めて助けてもらった。彼は長崎に着くや滝ノ観音に参詣して感謝を述べ,来朝するたびに滝淵の普請を行ったり観音堂を建てたが,その観音堂へ渡る橋がらかん橋である。参道口には羅漢像が立ち並び,観音堂近くの岩壁には十八羅漢が彫ってある。創建年代は不明だが,寛文9年に観音堂を建てたあと2年後にも来朝したので,このとき(寛文11年)かとも思う(滝の観音寺縁起)。一方年代調査のため石橋親柱前の盛土した壁石をはずすと,その石に「三庚辰」の刻銘が現れた。三の上は石が割れているが,干支で元禄13年と分かる。この石はあとで盛土した時の壁石だから創建より後だが,元禄13年以前であることが分かった(石橋物語・九州の石橋をたずねて)。幽谷深山の滝ノ観音境内は,昭和39年10月16日に県名勝に指定され,らかん橋も名勝に含まれる指定文化財だったが,昭和57年7月の大洪水で流失した。石橋は流れたが,地域が名勝のため石橋だけの指定解除にはならないという。許登受の同胞が架けた長崎の橋はほとんど緩やかな太鼓橋であるが,らかん橋は大きく太鼓型になっており,中国の風情が強い太鼓橋といえる。昭和61年12月に再建された。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7223349