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菊池往還
【きくちおうかん】


熊本城下と菊池地方の中心地隈府(わいふ)を結んだ道路。日田往還の一部。現在の国道387号の熊本市~菊池市間のルートとほぼ一致する。熊本城下から立田口(東坪井の赤鳥居)を出て薬園町で大津街道と分岐,三軒町通りから須屋,黒石,御代志(以上菊池郡西合志(にしごうし)町),高江(同郡泗水町)を経て,隈府に至る。「肥後国誌」には府新一町目札ノ辻(熊本市新町1丁目)から隈府町御高札場まで6里とある。江戸期の肥後国中絵図(熊本大学図書館蔵)によると,花房台地を下り広瀬(菊池市)を経由する現ルートより,高江から合志(こうし)川の谷をさかのぼり,万太良(まだら)坂(斑坂),赤星(菊池市)を経由する迂回路が一般的であったと考えられる。このことは「島屋日記」の嘉永2年の「花房坂造り直し」の記事からもうかがえる。明治期に3等県道として整備され,明治30年頃から客馬車が熊本~隈府間を往復,大正2年には両地を結ぶ軽便鉄道(菊池軌道,現熊本電気鉄道)が菊池往還と並走するようになった。菊池往還に沿う西合志町須屋の黒石の集落は,寛永13年熊本藩主細川忠利が熊本城下の北方の守備のため開拓にあたらせたもので,約750mにわたり街村状に集落が続く。近年,背後は熊本市のベッドタウンとなりつつある。黒石から御代志への沿道に九州農業試験場・国立療養所再春荘・菊池恵楓園・熊本種畜牧場などが所在,これらの一角に残るクヌギを主とする雑木林が熊本の武蔵野の景観をとどめる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7224738