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通潤橋
【つうじゅんきょう】


上益城(かみましき)郡矢部町長原,五老ケ滝川(轟川)の渓谷に架かる通水石橋。慢性的乏水地域であった白糸台地8か村のため,矢部手永惣庄屋布田保之助が造った江戸期の代表的石造橋の1つ。一拱式の眼鏡橋で,橋長75.6m,幅員6.3m,高さ20.2m,拱間(アーチの直径)28.1m,眼鏡橋では日本一の大きさを誇る。弘化3年起工,安政元年7月完成,工費120貫,人夫延べ3万人を要したという。緑川水系一帯に散在する石造橋のなかでも機能,外観,構築技術ともに最高水準とされる。構造上,サイホンの原理を応用した独創的設計による3本の通水管が埋設され,強大な水庄に耐える良石材を柾目に用い,中央に30cm角の通水孔を掘ってブロック状にしたものを連結して通水管を造り,緩衝材として松丸太をくり抜いた木管をはめ込み,継ぎ目には漏水防止のため独特の工夫をした漆喰を用いるなど,優れた技術が随所に見られる。外観では,橋の巨大な重量を支えるため,鎖石と呼ばれる石を挿入し,橋の両側に鞘石垣を設け,熊本城の石垣と同じ工法で反りをつけ,足元を広げて安定感を出し,石垣が緩むのを防ぐためすべて角石を用いていることなども橋の造形美をいっそう高めている。笹原川上流から6km導かれた水は,この橋を通り,白糸台地の100haの水田を潤す。橋の脇には,橋構築時の指揮所(御小屋),資料館,布田神社などがある。毎年,旧暦8月1日の八朔祭りには,通水管内の土砂を取り除くために放水栓が拔かれ,豪快な水のアーチが描かれる。国重文。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7226431