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肥薩線
【ひさつせん】


JR九州が経営する路線の1つ。鹿児島本線八代(やつしろ)駅から人吉,吉松(鹿児島県吉松町)を経て日豊本線隼人駅(同県隼人町)に至る。全長124.2km。駅数は28,うち県内では矢岳駅(人吉市)までの17。明治29年11月九州鉄道門司(現門司港,福岡県北九州市)~八代間が開業。八代以南の路線について明治30年9月測量を開始。路線は水俣・川内(せんだい)(鹿児島県川内市)を経て鹿児島に至る海岸ルートと人吉・吉松・隼人を経て鹿児島に至る山間ルートの2案が論議されたが,国防上の理由から官設による山間ルートでの建設が決定された。県内では同41年6月八代~人吉間,同42年11月矢岳トンネル(全長2,096m)の竣工により人吉~吉松間が開業し,門司―八代―人吉―鹿児島間が全通,鹿児島線と称した。明治39年7月には九州鉄道が官設鉄道八代~坂本間を借受し,坂本の九州製紙会社向けの貨物列車を運転している。昭和2年10月八代―水俣―川内―鹿児島に至る海岸ルートが全通し,鹿児島本線と称したため,肥薩線と改称。肥薩線は山間部を走るため路線は変化に富む。八代~人吉間は日本三急流の1つ球磨(くま)川沿いに貼り着くように敷設され,この区間だけで24のトンネルがあり,人吉を過ぎて,矢岳越えの難所に入る。スイッチバックで有名な大畑(おこば)駅(人吉市)から円周2km,高低差52mのループ線を通り,標高537mの矢岳駅,さらに矢岳トンネルを抜けると下り勾配となり,霧島の連山が現れ,スイッチバックの真幸(まさき)駅(宮崎県えびの市)を経て吉松駅に至る。なお,矢岳越えは蒸気機関車の時代には機関士泣かせの難所で,トンネル内での窒息事故が多発したほか,同20年8月吉松~真幸間の第2山神トンネル内で降車した乗客が退行列車に接触し死者49・重軽傷者20を出す惨事も起こった。同32年2月瀬戸石(坂本村)~海路(葦北郡芦北町)間の線路変便が行われ,現在は八代~人吉を結ぶ国道219号の整備の遅れや北部九州と宮崎方面への最短路線として重要な路線として,くまがわ・えびのなどの急行列車も運転される。同62年4月1日国鉄の分割民営化により,JR九州が経営する路線の1つとなった。県内では八代駅で鹿児島本線,人吉駅で湯前線と接続する。近年,一勝地駅(球磨(くま)郡球磨村)の入場券が受験などの勝負運に通じることから学生・マニアに人気を呼んでいる。また,矢岳駅前に58654・D51170の蒸気機関車が保存されている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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