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加久藤トンネル
【かくとうとんねる】


えびの市と熊本県人吉市を結ぶ国道221号のトンネル。坑口の位置は本県側が,えびの市東川北字黒原,熊本県側が人吉市大畑(おこば)町字大谷。大谷は人吉ループ橋の架かる谷を地元では梶原と呼び,その通称である。全長1,808.7m(本県側1,160m,熊本県側648.7m),幅員8.5m・高さ4.5m。トンネルの標高は,えびの側564m,人吉側583mであるが,えびの側からトンネル中央まで2.3%の上り勾配,トンネル中央から人吉側まで0.3%の下り勾配がついている。県境には内部照明による標識がある。トンネルの天井裏は通気坑であり,天井には通気穴が開けられていて,両坑口の上部から吹き込まれた空気がトンネル内に押し込まれ,それを自動車がトンネル外に吐き出すという半横流式換気方式を採用。照明灯・非常電話・押ボタン式警報装置・遮断機・消化栓を設置している。トンネル工事は,発注も含め建設省が担当し,昭和44年8月,本県・熊本県側同時に着工した。途中,毎分200~300ℓの湧水箇所ではアーチ基礎の沈下を防ぐため補強工事をしたり,えびの側含水層ではトンネル頂上部の補強のため鉄リングを入れるなど苦労があったが,昭和45年10月導坑貫通,同47年3月竣工を迎えた。その後,昭和52年4月人吉ループ橋完成,同53年10月えびのループ完成,さらに同54年8月取付け道路の完成と続き,加久藤トンネルの真価が発揮されることになった。加久藤峠(堀切峠)越の難渋を極めた旧道時代を知る人には,まさに昔日の感がある。この国道改築工事により,えびの市小田字松原と人吉市上田代町字上原の間は,距離が24kmから19.8kmに短縮された。また峠越えの時代には路線バスの運行がまったくなかったが,この区間をバスは40分で結ぶようになった。トンネル付近の交通量は,竣工後の昭和50年には2,045台であったのが,取付け道路完成後の同55年には3,541台とかなり増え,さらに同58年には6,253台になった。8年間で3倍の伸びである。加久藤トンネルは,九州自動車道(えびの市~鹿児島)と同道宮崎線の開通(いずれも昭和56年10月)で高速道路時代を迎えた南九州道路網の出入口として,重要な役割を果たしている。しかし,こうした交通量の増加は,近年このトンネルの大きな問題になってきた排気ガス汚染を生んでいる。先の換気方式では追いつけないのである。トンネルの維持・管理は,本県側も含めて人吉土木事務所の管轄に属し,事故の際の遠隔制御装置管理室も同所内にある。非常通報はすべて人吉側に伝達される。なお,えびのループには雲海トンネル(全長405m)と観望トンネル(全長104m)がある。ループの一部を占める弧状のトンネルである。加久藤トンネルの近くの展望台から見た,盆地の閑雅なたたずまいや霧島連山の雄大な眺めは,道行く人々の心を和ませている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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