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霧島山
【きりしまやま】


宮崎県と鹿児島県の県境にまたがる火山群の総称。えびの市・小林市・都城市・西諸県(にしもろかた)郡高原(たかはる)町,鹿児島県吉松町・栗野町・牧園町・霧島町の3市5町にかかる。23の火山体からなり,その規模は東西約30km南北約20kmである。最高峰は韓国岳(1,699.8m)で,高千穂峰(1,573.7m)がそれに続く。火山列は主に北西から南東方向をとり,大小さまざまの火口・火口湖を有し,極めて新鮮な火山形態を留める。火山活動は主に第四紀で,有史以来の爆発も多く記録されており,浅間山や阿蘇山のそれに匹敵する。第四紀初め,栗野安山岩と呼ばれる溶岩流が現在の韓国岳付近を中心として噴出,なだらかな盾状火山を形成した。その直後に寄生火山の栗野岳(1,094.2m)や湯の谷岳(984.0m)を生じている。この火山が浸食されたのち,白鳥安山岩が噴出,同様に低平な盾状火山を形成,続いて蝦野岳(1,305.4m)・獅子戸岳(1,428.4m)の寄生火山が生まれた。この2期の大規模な活動で霧島火山の基盤がつくりあげられ,そののちに現在みる諸火口の形成が行われた。これも新旧の2期に分けられ,古期の活動は更新世で,火口湖である六観音池・大浪地,韓国岳・大幡山(1,381.0m)・夷守岳(1,344.1m),高千穂峰東部寄生火山である二ツ石(1,319m)などを噴出した。新期は現世に属し,韓国群では甑岳(1,301.4m),不動池・白紫池(火口湖),飯盛山(846.3m)のほか韓国岳北西部火口壁爆裂火口,硫黄山などが,高千穂群では中岳(1,332.4m)・高千穂峰,大幡池・御池(火口湖),新燃(しんもえ)岳(1,420.8m)・御鉢(おはち)などがそれぞれ山体を形成している。これらのうち,新燃岳・御鉢は現在も噴気活動を続けており,硫黄山も硫気ガスを盛んに吹き出している。霧島火山の特徴は,韓国岳・大浪池・新燃岳などホマーテ型(臼状火山)の大火口を有するものが多く,多数の火口湖を含む点である。このほか,コニーデ型(高千穂峰・甑岳など)・カルデラ型(大幡山・中岳)・マール・砕屑丘などもみられる。山麓は溶岩台地が広い裾野を展開している。温泉は,えびの高原と南西山腹の霧島地熱地帯などに湧出し,特に後者は霧島温泉として,林田・丸尾・湯之野など多数の泉源を抱えている。霧島山の火山活動の記録は,「続日本紀」の天平14年にある「大隅国司言。従今月廿三日未時。至廿八日。室中有声。如大鼓。野雉相驚。地大震動」が初出とされる。以後,新燃岳と御鉢を中心に活動を続け,特に12世紀,16~18世紀,19世紀後半から今世紀初頭にかけてが激しい活動期であった。これらの中で,天永3年・元暦元年・文暦元年の噴火は,霧島山中央権現や狭野神社の焼失,下って享保元年には霧島山麓のほとんどの神社を噴火で失っている。また永禄9年には多数の死者を出したという(三国名勝図会)。火の山霧島山を祀る神社は古くは諸県郡一座小霧島神社とある式内社で,そののち山麓各地に広まり,それが統一されて霧島六所権現と称するようになった。それらは,雛守六所権現社および同社へ合祀された霧島山中央六所権現(以上小林市),狭野大権現社・霧島東御在所両所権現社(以上高原町),東霧島権現社(高崎町),西御在所権現社(霧島町)である(三国名勝図会)。現在の呼称はそれぞれ,夷守神社・狭野神社・霧島東神社・東霧島神社・霧島神宮である。霧島山の植物群落は,高千穂峰・御鉢・新燃岳のように火山活動のため山頂部がほとんどむき出しの裸地のままの部分から,甑岳の針葉樹林(国天然記念物)まで多様なものがみられ,中でも,えびの高原のススキ草原,ノカイドウ群落(国天然記念物),韓国岳北部中腹の赤松老巨木群落,ミヤマキリシマ群落などが知られる。南九州で紅葉景観がみられる数少ない地域の1つでもある。また冬季には火口湖白紫池は結氷して天然スケート場となるほか,韓国岳西面は霧氷景観もみられる。このように多様な火山地形と美しい自然景観が相まって,霧島屋久国立公園霧島地区を構成している。公園域を主要地方道小林えびの高原牧園線が貫通しており,えびの高原・霧島温泉・霧島神宮が主要な観光ターミナルである。霧島山はもともと南九州の地溝性凹地に噴出した火山群であり,周囲に低地や盆地が広く分布するため,孤立山体的性格が強い。これらの低地には霧が発生しやすく,霧島山はその上部に高く島状に浮き上がってみえることから霧島の呼称がついたといわれる。あるいは多雨地帯のため,しばしば雲がかかり,山麓が霧に隠され,あたかも島のように見えることを意味するかもしれない。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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