100辞書・辞典一括検索

JLogos

12

鞍岡
【くらおか】


旧国名:肥後,日向

五ケ瀬川源流部,九州山地の一部をなす山間地に位置し,西は肥後国(熊本県)と接する。五ケ瀬川沿いに小盆地があるが,東・西・南の三方は1,000m級の山々に囲まれ,東は戸川山・祇園山・揺岳,南は白岩山・木浦山・国見峠(大正期以前は久留美峠といった)・宝木山などがそびえる。隣村との交通のため,山と山との鞍部にはいくつかの峠があり,東方三ケ所へ越える笠部峠・大石越,南方椎葉(しいば)に通ずる胡摩山峠・霧立越,西方熊本県に通ずる黒峰峠などはその代表的なもので,古来の古い峠である。五ケ瀬川を挟んで耕地が帯状に断続して散在している。鞍岡盆地は標高500mにあり,集落は盆地から山の中腹の平坦地にあり,比較的大きな集落としては本県で最も高い位置にある。このため気温が低く,「九州の北海道」と呼ばれるほどである。地名の由来については大別して2説あり,1つは民謡稗搗節の鶴富姫との悲恋物語で有名な那須の大八(那須大八郎宗久)が,平家追討のため当地まで馬上できたが,鞍岡と椎葉の境の山は険しい難所,とても馬上では通れないので当地で馬を降り徒歩で進んだと伝え,その時当地に鞍を置いたので鞍置村といったのが,後になまって鞍岡村になったという説があり,その時の馬の鞍と伝える鞍が現在も当地の民家に伝わっている。第2は鞍岡盆地の中央に屹立する冠岳に古来から祀られている冠岳八面大明神の祭神が闇龗神(くらおかみのかみ)なので,その祭神名が村名になったという説である。ほかに「くら岡」とは日陰の岡という意味の古代語であると,地名学的に述べる説もある。地内倉元には縄文時代の遺跡がある。南端にそびえる白岩山は標高1,646.4mの県内第10位の山だが,山頂は山名の示す通り石灰岩の白い巨大な岩峰で,石灰岩を好む特殊な植物や北方系の珍しいものが多い。その植物は白岩山石灰岩峰植物群落として県天然記念物に指定され,この岩峰特有の植物約60種が数えられている。特に興味深いものにはイチョウシダ・クモノスシダの好石灰岩植物や多くのコケ植物,この山を南限とするイブキヌカボ・カンザシギボウシ・レイジンソウ・ホタルサイコ・モリイバラ・キヌタソウ・マルバノイチヤクソウ・イワギク・ヤハズハハコなどがあり,また九州では白岩山にしかみられないヒロハヘビノボラズ・シコクシモツケソウも生えている。
鞍岡(中世)】 南北朝期から見える地名。
鞍岡村(近世)】 江戸期~明治22年の村名。
鞍岡村(近代)】 明治22年~昭和31年の西臼杵郡の自治体名。
鞍岡(近代)】 昭和31年~現在の五ケ瀬町の大字名。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7234931