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蒲葵御嶽
【くぼうのうたき】


今帰仁(なきじん)村今泊小字長嶽原にある御嶽。方言ではクボウノウタキ・クバンウタキといい,あるいは地元では単にウタキ・ウガミなどと呼ぶ。「おもろさうし」に「こばうたけ」,「由来記」にコバウノ嶽,「今帰仁村史」ではコバエノ嶽・クバのお嶽,「国頭郡志」では公方ノ御嶽,「沖縄国頭の村落」ではクボーヌウタキと見える。嘉津宇岳の異称とする説もあるが,今帰仁城(北山城)の南西に位置する標高190mの山にあり,「今帰仁方言辞典」に伊平屋(いへや)島方面の海上から見ると嘉津宇岳といっしょに見えるとある。名称はクバの木が散在することにちなむという。頂上には石灰岩が露出しており,斎場があって香炉が並んでいる。眺望がよく,今帰仁城をはじめ今帰仁村の全域,伊江・伊是名(いぜな)・伊平屋の島々,国頭(くにがみ)山地,辺戸(へど)の安須森や遠く与論島(鹿児島県)まで一望できる。「由来記」には,「コバウノ嶽,神名,ワカツカサノ御イベ」とあり,昔,君真物が現れる時,謝名(じやな)村のアフリノハナに黄色い涼傘が立つときには,コバウノ嶽に赤い涼傘が立ち,逆にコバウノ嶽に黄色い涼傘が立つと,アフリノハナに赤い涼傘が立つという言伝えがあったと見える。今帰仁ノロの管掌。山の中腹あたりにも斎場があり,そこには上下3段の座が設けられている。旧暦5月15日と9月15日の祭りには,ノロ以下の女神官が上の座からイビに向かって祭祀の執行を告げ,ノロとトモノカネーノロだけが頂上の斎場まで登って五穀豊穣を祈願する。カネーノロの合図で下の段で待機している他の女神官や村人たちが礼拝し,頂上での祭祀を終えた2人のノロも下りて来て,さらに上座で祈願して祭りを終える(今帰仁村史)。古くから人々の信仰を集めてきたところである。御嶽の南西側には,プトゥキヌイッピャー(ほどきの岩窟・仏窟)があり,子授けを願って訪れる人たちがいる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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