パイミ崎
【ぱいみさき】

西表(いりおもて)島南西端,竹富(たけとみ)町崎山の西端にある岬。方言でもパイミサキという。またヌバン崎とも呼ばれ,方言ではヌバンザシという。「八重山語彙」にはヌハマザキィと見える。ペリーの海図に見えるククテン(Kukten)はパイミ崎を指すと思われる。また古い地図には八重目崎とある。地形図などではパイミ崎のやや南をヌバン崎としているが,本来両者は同一の岬の名称で,ヌバンとはこの岬の東側にある海浜の名称であることから,竹富町西表の祖納(そない)・干立(ほしたて)の人々が海浜名を岬の名に用いたと考えられる。これに対し,崎山ではパイミサキと称した。地形図などではパイミ崎と見えるが,語源はパイ・ミサキすなわち南岬の意味であるという。よく似た名前をもつ西表島東部の南風見(はいみ)崎はパイミ・ザキと呼ばれて区別されている。波照間(はてるま)島の西を北上する黒潮がこの岬に当たるため,付近の海域は常に波が高い。地元ではパイミサキの瀬をパイ(南)コチ,西表島北西端の宇奈利崎をニシ(北)コチと称して対にしている。この2か所の瀬はいずれも昔のくり舟にとって最大の難所であり,西表島で最も神高い(神々しい)ところとして恐れられてきた。ヌバンの浜のフクギの森の中には崎山や網取集落の村人がパイコチを鎮め,航海の安全を祈願した御嶽があり,ヌバンヌウガンと呼ばれている。ヌバンのことを別名でボールとも呼ぶが,これは望楼のなまりで,日露戦争の折に日本海へ向かって北上していくバルチック艦隊を監視した海軍の望楼がヌバンの山の上にあったことにちなむ地名である。ヌバンの浜の前の入江をヌバンフチというが,民謡「崎山節」には「ぬばま口」と謡われている(八重山島歌節寄25/歌謡大成Ⅳ)。

![]() | KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7241417 |