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宮鳥御嶽
【みやとりおん】


石垣市石垣のピィサガーパカにある御嶽。方言ではミャートゥリィオンという。「由来記」では宮屋鳥御嶽と見える。神名は神ヲレハナ,イビ名は豊見タトライ。昔,島に村もなく,人々が力をたのみに争っていた頃,マタネマシズ・ナアタハツ・平川カワラという3兄弟がいたという。マタネマシズは戦乱の世にあっても信仰心が篤く,石城山に住んでいた。ある寅の日の朝,テマサシモトタイという神が,マタネマシズの妹に乗り移って,宮鳥山で「神ソラト申ハ,人間ノ父母,人ト申ハ神ノ子也。神ノ子ナレバ,諸人皆兄弟也。同兄弟トシテ,一向争戦ノハテナク,人ノ命ヲ失フ事,如殺鳥獣。是神慮ニ不叶。汝能慈悲ヲ以,諸人ヲ愛シ,正直正路ヲ以,神ヲ敬フベシ。行末守ベシ。我栖此山」と託宣した。マタネマシズは宮鳥山に近い石垣の地に移り住んで,託宣の教えを守って生活したところ,作物も豊作が続いた。他の人々もこれを見て集まり,やがて石垣・登野城(とのしろ)の村が形成されたという。マタネマシズの兄弟が御嶽として拝み始めたところがこの御嶽で,人々もこれを崇敬したという(由来記)。プーリィ(豊年祭)の行事のうち宮鳥御嶽の前で行われるミシャグパーシィ(神酒栄やし)には,「宮鳥ぬ御神ぬみぶぎん ひ,稔世ば実り世ば給ぼうられ(宮鳥御嶽の御神のお陰で,ヒ,稔る世を実入り世を給わられて)」と謡われる(フミシャギィ6/歌謡大成Ⅳ)。また「雨ちぢ」では,「みやとれぇぬうふうがん(宮鳥御嶽の大神)」に雨乞をしている(雨乞いの歌①アマチィジィ1/同前)。御嶽は南面し,神庭に拝殿がある。拝殿の背後も一段高い神庭で,その奥に石垣で区画されたイビ域がある。中央部の切妻形の木造瓦葺門を入ってイビに至るが,イビの周囲はさらに方形に石垣で囲われている。イビは巨石で組んだ祠で,キクメイシを利用した2基の香炉が安置されている。香炉後方の内郭石垣面に長方形の穴が開いている。境内にはクワノハエノキ・ヤンバルアカメガシワ・アカテツ・フクギ・ガジュマル・アコウ・リュウキュウチシャノキなどが群落を形成する。リュウキュウチシャノキは熱帯系常緑喬木で,八重山・宮古地方に生育するが個体数の少ない植物。宮鳥御嶽のリュウキュウチシャノキとして県天然記念物に指定されている。御嶽の北側に石垣小学校がある。




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「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7241857