海東郡

慶長５年関ケ原の戦のあと尾張は清須の福島正則，黒田の一柳直盛，犬山の石川貞清などが移封・除封され，武蔵忍城主松平忠吉が入封，これが尾張藩の起こりとなり，当郡は尾張藩領となった。同12年忠吉の死後徳川義直が甲斐府中城から入封し，実質的な尾張藩が成立した。天明年間の藩政改革により所付代官が設置され，「徇行記」によれば，当郡は大代官所支配が新田村も含めて28か村，佐屋代官所支配が津島村ほか新田村含め58か村，清洲代官所支配が新田村も含め60か村，鵜多須代官所支配が新田村６か村となっている。「寛文覚書」によれば，村数129，本田の元高７万5,985石余・概高10万7,045石余，新田の元高5,107石余・概高5,208石余・高7,633石余，寺社領は領高内10石・領高外2,047石余，船頭給は領高外21石余，反別は，本田が田4,512町余・畑1,709町余，新田が田669町余・畑682町余（津島新田の元高226石余・高283石余は延享２年本田入），寺社領が領高内田４反余・畑３反余，同領高外田89町余・畑98町余，船頭給（領高外）が田８反余・畑２町余，見取場が田３町余・畑15町余，給人自分起が田131町余・畑17町余，家数8,602・人数４万4,522，馬2,393・牛５。「徇行記」には，村数142，元高８万1,075石余・高12万3,960石余。「天保郷帳」では，村数138，高８万8,891石余。「旧高旧領」では，村数153，高12万7,615石余（うち社寺除地1,901石余・犬山藩領分454石余・美濃今尾藩領分878石余・尾張藩領分12万4,380石余）。「天保郷帳」に見える村名は，廻間村・土田村・上条村・今宿村・甚目寺村・上萱津村・中萱津村・下萱津村・本郷村・坂牧村・長牧村・北間島村・花常村・西条村・中島村・馬島村・堀之内村・東条村・八ツ屋村・鎌須賀村・三本木村・砂子村・万場村・松下村・長須賀村・伏屋村・前田村・助光村・榎津村・江松村・福田新田村・茶屋新田村・茶屋後新田村・冨永村・包里村・供米田村・春田村・戸田村・服部村・千音寺村・秋竹村・桂村・新家村・川辺村・小家村・伊麦村・下之森村・鯰橋村・徳実村・須成村・今村・蟹江本町村・蟹江新田村・蟹江新町村・西之森村・金柳村・神尾村・大坪村・莪原村・下田村・乙之子村・小橋方村・安松村・遠島村・篠田村・木田村・木折村・沖之島村・金岩村・花長村・冨塚村・新居屋村・石作村・方領村・森村・小路村・古道村・二ツ寺村・東溝口村・花正村・中橋村・森山村・丹波村・蜂須賀村・青塚村・牧野村・北苅村・寺野村・大木村・蛭間村・宇治村・下切村・椿市村・光正寺村・北神守村・南神守村・越津村・牛田村・百島村・百町村・白浜村・高台寺村・鹿伏兎村・大野新田村・善太新田村・鰯江新田村・犬井村・半右衛門新田村・頭長村・中一色村・落合村・北一色村・佐屋村・依田村・須賀村・内佐屋村・稲葉村・甘村井村・唐臼村・日置村・柚木村・津島村・見越村・根高村・古川村・諸桑村・南河田村・北河田村・諏訪村・小津村・古瀬村・千引村・葉苅村・佐折村・勝幡【しよばた】村・納屋山新田村・鍋蓋新田村・又吉新田村。寛永11年東海道の回り道として佐屋街道が開かれた。熱田宮宿から愛知郡岩塚，当郡の万場・神守・佐屋に至り，そこから船で３里桑名に至る。熱田～桑名の船路７里よりも短かかった。当郡にはまた津島湊・佐屋湊があった。津島湊は佐屋街道の設置によって延宝７年本陣廃止，寛文年間船役44人の高役免許の特権も廃されたが，その後天王社の参詣人などでにぎわい，天明年間には船会所も再建された。佐屋湊は船役41人・役船17を持ち，藩主の座船３，幕府の平田船10なども預かった。承応元年湊番所が設置され，のち享保12年には船奉行の支配となった（県史２）。佐屋には天明の藩政改革によって佐屋代官所が置かれ，天保年間には海西郡・当郡のうちで109か村を支配し，総石高は７万4,053石余にのぼった。また，神守にも代官所が設置されたが，享和２年に廃止された。当郡は新田村が多く，鬼頭景義の手によって萱津村～福田前新田に至る萱津用水が開削され，数多くの新田村が誕生した。また，藩が計画し商人などに請け負わせた新田として鍋蓋新田29町余・茶屋新田田畑155町余（1,671石余）・茶屋後新田田畑113町余（1,189石余）などの新田干拓が行われた（同前）。低湿地で水害に悩まされることが多かったが，米・稗・豆類・瓜・野菜・大麦・小麦・菜種などを作り，養蚕・木綿織，藍の栽培も行われ，海岸地方では漁業にも力を入れていた。寺社の門前としてにぎわった村に，津島村（天王社）・甚目寺村（甚目寺）・馬島村（明眼院）などがある。明治５年愛知県に所属。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典(旧地名編)」 JLogosID : 7355780