犬飼村(近世)

　江戸期～明治22年の村名。那珂郡のうち。福岡藩領。西堅粕触に属す。天正年間の「指出前之帳」によれば，武蔵田を含めた当村の地積・分米は田54町余・710石余，畠６町余・51石余，合計60町余・761石余。村高は，「慶長国絵図」1,163石余，「正保郷帳」1,304石余（田1,258石余・畠45石余），「元禄国絵図」1,054石余，「天保郷帳」1,324石余，「旧高旧領」1,193石余。江戸中期頃までに地内に辻堂作手町が成立した。「続風土記付録」によれば，当時は人家がなく，宝暦10年に博多辻ノ堂口作出町（辻堂作手町）の農民25戸を分けて犬飼分として当村の田地を耕作させているという。また，安永６年に当村の田地のうち５町余を堅粕村枝郷辻村へ分けたという。文化９年の庄屋は次右衛門（県史資料７）。住吉社がある（県史資料４）。明治初期には，集落は本村・野入に分かれ，戸数90・人口360，田59町・畑３町，正租は米大豆485石余，雑税は米大豆14石余と金８円余，馬12，荷車３，水車１，本村にある小学校の生徒数は男30・女13，物産は里芋・茄子・西瓜・瓜・葱・菓子類・菜種・酒など。房州濠跡・古川跡・謝国明墓がある（地理全誌）。明治初年頃辻堂作手町を合併。明治22年字出来町は福岡市の一部となり（明治26年出来町として起立），残余は堅粕村の大字となる。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典(旧地名編)」 JLogosID : 7438381