水内川
【みのちがわ】

1級河川太田川水系の支流。佐伯郡湯来町本多田北方の冠山(1,004m)山中に源を発し,上流部は同郡吉和村との境界をなし,湯来町を北東流し,北からの打尾谷川,南からの伏谷川と合し,同町大字下の北辺で太田川と合流する。流長22.1km。昭和5年5月に河川法の施行を受ける。中流から下流部は西中国山地特有の断層線谷をなしている。国郡志下調郡辻書出帳の同郡部には水内川と,宝暦12年の佐伯郡下村諸色差出控帳(高橋家文書)には本川と記載する。国郡志下調郡辻書出帳には「右諸荷物積下し株艜下村・麦谷村・和田村此三ケ村ニ舟数弐拾六艘有,尤水内川者小川ニ而荷物多分積込候而者通船難相成,依而下村之内久日市与申所迄軽荷ニして積下し,同所ニ揚ケ置,夫より小川三艘積ヲ壱艘ニして川下し仕候……水内筋和田・麦谷・下村三ケ村之重立産業ニ御座候」と,高橋家文書には「元禄年中通船之儀御役所江御願申上御聞届ケ御免被為仰付,同三年船浮初め申候,其節備前之国より船頭并ニ船大工等呼寄,川堀明ケ船作出し候」とある。元禄3年以来の舟運の発達は,宝暦12年には久日市(さかいち)に石見国浜田へ通じる往還の船渡場が置かれ,板木・薪炭・麻苧などの山荷物の輸送などにも重要な河川となっていた。さらに寛文3年の「芸備国郡志」や安永9年の佐伯郡諸産物辻寄帳には水内の鮎として名を残し,現在も渓流には溯上がみられる。支流の打尾谷川に沿う湯来温泉は,世界第4位のラジウム含有量として,国民保養温泉地の指定を受け,広島市郊外の保養地として入湯客が絶えない。湯ノ山明神旧湯治場も有名である。

![]() | KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7606174 |