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「平凡なことを非凡に努力する」


【名言・格言者】
鍵山秀三郎(株式会社イエローハット創業者)

【解説】
 鍵山秀三郎(かぎやまひでさぶろう)氏は、1933年、東京都に生まれました。1952年に岐阜県立東濃高校を卒業後、自動車用品販売会社のデトロイト商会に入社し、1961年、独立して自動車用品販売会社ローヤル(現株式会社イエローハット)を創業しました。
 冒頭の言葉は、「簡単なこと、単純なことを極めることこそ重要である」ということを表しています。
 鍵山氏は、都会の裕福な家庭に生まれ、戦時中も何一つ不自由することない生活を送っていました。しかし、1945年、地方への疎開により生活は一転しました。鍵山氏は、生活のために、少年の身ながら過酷な農作業を強いられることとなりました。鍵山氏の一家が耕していた田畑はもともと誰も手をつけないような荒地であり、そこに作物を植え、収穫を得るためには大変な苦労が必要でした。しかも、それだけの苦労をしても、必ず報われるとは限りません。ひとたび渇水や大雨などが起これば、ほとんど収穫ができないこともありました。それでも、生活のためには、延々と努力を続けなくてはなりません。鍵山氏はこの経験を通じて、「約束も保証もないこと」に対して一生懸命に取り組む、強じんな忍耐力を身に付けました。
 独立した当時の努力について、鍵山氏は、次のような例を挙げて述べています。

「(プールから水をくみ出すことを考えた場合)もちろん大きな器、大きなバケツがあればくみ出すのは速い。でも、それがなければ、私は杯でもくみ出す努力を怠らない」

 膨大な量の水をたたえるプールから杯で水をくみ出すことは、ほとんど意味がないように思われます。しかし、たとえわずかな量の水しかくみ出すことができなくても、その努力を続けることにより、やがてはすべての水をくみ出すことができます。杯で水をくみ出すことを続ける非凡な努力によってこそ、物事を成し遂げることができるのです。
 この言葉の通り、鍵山氏は非凡な努力を続けました。独立した当初、前職の会社がメーカーに圧力をかけたことで、鍵山氏はメーカーから商品を売ってもらえなかったことがありました。この時、鍵山氏は、売れ残って倉庫に積み上げられていた商品を借り、自転車に積んで売り歩くことを続けました。鍵山氏のこの非凡な努力の結果、翌年にはこの商品は月に数万本も売れるようになり、売り上げに大きく貢献することとなったのです。
 鍵山氏は、独立する以前から現在に至るまで、社内外の至るところで徹底的な掃除を続け、掃除の実践によって企業や社員をよりよく変えることを提唱してきました。掃除は誰もができる平凡なことですが、それを長きにわたって続けることは非凡な努力を要します。この掃除への取り組みも、鍵山氏の「誰でも知っている小さなことに目を向け、それを徹底して行う」という信念を如実に表すものといえるでしょう。
【参考文献】
「凡事徹底 平凡を非凡に努める」(鍵山秀三郎、致知出版社、1995年5月)
「社長の哲学」(青木定雄、鍵山秀三郎、鳥羽博道、矢野博丈、致知出版社、2005年5月)




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「経営のヒントとなる言葉50」
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