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PETフィルム
【ぴーいーてぃーふぃるむ】


PolyEthylene Terephthalate film

エチレングリコールとテレフタル酸を重縮合反応にすることによって得られる結晶性の熱可塑性ポリエステルであるPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂からなる高分子フィルム。通常は、PET樹脂を成膜後にXYの2軸方向に延伸(2軸延伸)して分子を配向させることで結晶化させ、強度と耐熱性を持たせている。また寸法安定性、耐薬品性、光学特性などのバランスに優れることから、工業用、包装用、磁気テープ、フィルムコンデンサーなど向けに幅広く使われている。
PETフィルムの用途として近年注目されているのが、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどのFPD(フラットパネルディスプレイ)向けの機能フィルムである。たとえば、液晶ディスプレイでは、偏光板の表面を守るための保護フィルム、位相差フィルムなどを積層するための剥離フィルム、ディスプレイの表面反射や映り込みを抑えるための反射防止フィルム、光源の光を効率的に導光板に入射させるためのバックライト用高反射フィルム、側面から光源を照射させるエッジライトの光を拡散させるフィルム、電磁波防止フィルム、近赤外防止フィルムなどさまざまな目的で使われている。また、自動車分野では天井材向けに採用が活発化している。天井材としては、ウレタン樹脂やフェルト、ガラス繊維強化ポリプロピレンなど多様な材料が使われているが、PETフィルムは一体成形が可能で、材料すべてをPETで統一できる技術が開発されたことから、リサイクル性に優れる面でも注目されている。
2軸延伸PETフィルムは、機械的特性に優れることから工業用フィルムとして広く普及しているが、強度と伸びが二律背反の関係にあることから、強度を持たせるために伸びを犠牲にしており、成形加工面では使いにくい課題を抱えている。そこで、PET樹脂に共重合成分を導入することで分子構造の規則性を崩して伸びやすくした2軸延伸PETフィルムや2軸延伸をしない無延伸PET(A-PET)が開発されている。ただし、前者は耐熱性が低く傷が付きやすい、後者は強度・耐熱性・耐薬品性に劣る、といった課題がある。そこで、コンピューターシミュレーションなどを駆使して、2軸延伸PETフィルムの高機能化に取り組む動きが出てきた。




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「プロフェッショナル用語辞典 環境テクノロジー」
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