100辞書・辞典一括検索

JLogos

22

ダイヤモンドライクカーボン(DLC)
【だいやもんどらいくかーぼん;でぃーえるしー】


Diamond Like Carbon

ダイヤモンドに類似した炭素(カーボン)薄膜材料。炭素材料は原子間の結合形態によってさまざまな結晶構造をとるが、このうちダイヤモンドライクカーボン(DLC)は、ダイヤモンドとグラファイトの中間的な結晶構造を持つ。つまり、炭素を主成分としながらも若干の水素を含み、ダイヤモンド結合(SP3結合)とグラファイト結合(SP2結合)の両方の結合が混在しているアモルファス構造をとる。
特徴は、高硬度・低摩擦係数・耐摩耗性・電気絶縁性・耐薬品性・赤外線透過性など。このうち硬度についてはビッカース硬さ(HV)で見ると、3000~5000であり、ダイヤモンドの5000~10000には及ばないが、匹敵する硬さを持つ。摩擦係数(μ)は約0.1であり、高い潤滑特性を持っているのも特徴である。
DLC薄膜の製法としては、プラズマCVD(化学気相成長法)やPVD(物理気相成長法)が使われる。一般的な製法の1つは、PVDの一種であるイオンプレーティング法である。真空チャンバー中にベンゼンなどの炭化水素ガスを導入し、直流アーク放電プラズマ中で炭化水素イオンを生成させる。この炭化水素イオンは負電圧をもった被コーティング材にその電圧に応じたエネルギーで衝突し固体化、成膜する、という仕組みだ。
DLC薄膜は、耐摩耗性に高く低摩擦係数であることから潤滑性に優れる点などを活かして、工具、金型、各種擦動部品など多彩な用途に実用化されている。さらに用途を拡大するために、材料や成膜プロセスに工夫を加える検討が進められている。たとえば、水素を除いたDLCコーティング膜を作製して自動車のエンジンオイルとのなじみをよくしたり、プロセスを低温化することによってプラスチック材料にコーティングしてガスバリヤ性をもたせたPET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルを作製するといったユニークな製品が登場している。




(c)日経BP社 2011
日経BP社
「プロフェッショナル用語辞典 環境テクノロジー」
JLogosID : 8523543