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嘲る・嗤る
【あざける】


azakeru

【古代】そしり笑う、馬鹿にして笑う。[中国語]嘲笑。ridicule.

【語源解説】
アザケルはアザムクのアザとも同根語。古代では〈呰(シ)〉をアザにあてる。漢字、呰は叱(しか)ル、ソシルの意や疵(シ)と同じでキズ、ユガミ、いわゆる痣(アザ){あざ2@痣(アザ)}(皮膚にできるしみ)と同意。さらには、〈アバタ・ホクロ〉など皮膚の異変部分をさした。古代にみえる人名、〈阿佐麻呂(アザマロ)・阿耶女(アザメ)〉(8世紀古文書)はおそらく、痣(アザ)を顔や首筋などにもつところからの俗称が通名となったのであろう。古代アザケルはアザワラフと同系で、〈呰・嗤〉の漢字をあて、相手にアザのあること、肉体的欠点をそれとなく指摘する―{2}が原義。それに笑いやそしりが付加したことがアザケル。言動についても、マイナスの評価としてアザケルとなった。

【用例文】
○嘲(アザケリ)(紀)○嗤 mini{戯也、阿佐介留(アザケル)又曽之留(ソシル)又和良不(ワラフ)}(新撰字鏡)○法(ホ)華(ケ)経(キョウ)品(ボン)ヲ読ム人ヲ呰(アザケ)リテ現ニ口(クチ){くちすぎる)(ユ)斜(ガ)ミ(霊異記)○さかしらに迎へ給ひてかろめあざけり給ふ/わがしこ〔醜(みにくい)こと〕にうちあざ笑ひて語る(源氏)○謾 mini{アザケル}、{りっしんさと} mini{阿佐介留(アザケル)}(名義抄)○侍女忽チニ狂ヒテ哭(ナ)キ嘲(アザケ)ル(今昔)○人の嘲(あざけり)をもかへり見ず不思議の事をのみし給へり(平家)○各{おどりじ01}〔酔人を〕あざけりてすぎぬ(徒然草)○嗤(アザケリ)、嘲 mini{二字ノ義同シ}(下学集)○毛ヲ吹テキズヲ求メ白ヲ黒ト云ホドニコヽヲアザケルト云タデ候ゾ(毛詩抄)○キツネハ……〔ロバヲ〕大キニアザケッタレバ(イソポ)○Azaqeru. アザケル 嘲笑する、愚弄する。アザケリヲフセグ 嘲られぬよう振舞う(日葡辞書)○嘲哢(アザケル)(易節用集)○むかふの人の物しらずとあざけりおもはんや(好色袖鑑)○嘲る野輩も通々(ゆくゆく)在之(芭蕉)○嘲(アザケ)ル、哢(同)、嗤(同)、{りっしんさと)(同)(書言字考)○嘲(あざける)(早節用集)○あざけるやつらを耳(じ)目(もく)にふれず(安愚楽鍋)○アザケル 嘲 ヒトヲ嘲ケル。同義語 ソシル、グロウスル、バカニスル(ヘボン)○空には苦(にが)き嘲笑(あざけり)に雲かき乱れ(北原白秋)
【補説】
嘲(チョウ)は相手をことばでからかう意をもつので、アザケルにあてた。同音の{くちまわり)(チョウ)(鳥のうるさくさえずる)もあてる。⇒〈あざむく〉




東京書籍
「語源海」
JLogosID : 8537040