100辞書・辞典一括検索

JLogos

57

新しい
【あたらしい】


atarasii

【古代】古くなく、いきいきとし、誰の手にもふれてないこと。過去でも未来でもなく現在であること。こうした内容の有形、無形のもの、こと。[中国語]新。new.

【語源解説】
アタラ・シイと分ける。古くアタラ{アタラ}に〈可惜〉があててあるように、惜シムベキモノ(コト)の意で、〈新(シン)〉の意はなかった。〈新(シン)〉はアラタ{アラタ}―{2}現代でも〈アラタな決意をもってことにあたる〉など―{2}といった。アラタは生(アレ)来(キタ)ル→アラタとなったか。しかし、意味内容上、また、語形、語法上、アタラとアラタと混線して、ともに〈新(シン)〉の意でも用いるようになった。やがて、アラタシの形容詞形は用いられず、主としてアラタニの副詞形で用いられた。混線は主として、10世紀以降と思われるが、14世紀ごろからはもっぱら、アタラシの形容詞が用いられた。なお、アラタは神仏の奇縁のアラタカや改(アラタ)メルなどとも同根語か。

【用例文】
○新(あらた)しき年のはじめの初春のけふ降る雪のいやしけ吉(よ)事(ごと)(万)○古きもあたらしきも絵ども入りたる御厨子(みずし)ども(源氏)○新 mini{アタラシ}、可惜 mini{アタラシ}/新 mini{アラタシキ、アラタナリ}(名義抄)○事あたらしうさぶらへ共……はじめよりして申なり/あたらしき烏帽子(ゑぼし)、浄(じゃう)衣(ゑ)きて(平家)○Atara. アタラ 惜(お)しむべし。惜しいと思うような(もの)/Ataraxij. アタラシイ 新しい(もの)、アタラシサ(新しさ)(日葡辞書)○新(アタラ) mini{アタラシイ}(易節用集)○元日 あたらしきにつきて、日々に新にせんことを思ふべし(日本歳時記)○終(つい)に柴(しば)屋(や)町(まち)をみぬ事口惜(あたら)し/まどろみしに夜半とおもふ時あらたに霊夢あり/新玉(あらたま)の年のはじめ、女(め)松(まつ)男(お)松(まつ)を立(たて)餝(かざり)て(西鶴)○句の新らしきをよくよく眼を留べし/新(あたら)しみ(芭蕉)○新(あらた)(早節用集)○新を賞(しやう)じ旧(ふるき)を弃(すつ)べからず(譬喩尽)○新しいふんどしをして外科へ行(川柳)○かゝあが衣装(とば)を……紅絹(もみ)の真(ま)新(あたら)しい奴(やつ)よ/羽(は)織(おり)を出(だ)せ、ハイこれは古(ふる)い。新(あたら)しいのを出せ(浮世床)
【補説】
〈あたらしい/あらた、あらたなり(に)〉は同じように用い、〈あたら〉は可惜の本来の意がのちのちまでつづいて用いられる。




東京書籍
「語源海」
JLogosID : 8537055