遺伝
【いでん】

iden
【江戸時代】生物の生殖にあたり、児孫に伝わった親・先代のもつ性質。[中国語]遺伝。inheritance.
【語源解説】
オランダ語、erfenisの訳語、漢字語。代々先祖の遺した遺伝子が伝えられているもの。それに起因する病気を〈遺伝病〉(erfelyk zieke)と訳す。ただし、はじめ漢方系の用語、〈伝(でん)屍(し)〉をerfenisにあて、参照した。これは考え方として古くから伝染する病気の一つと考えられ、腹中に三(サン)屍(シ)虫(チュウ){さんしちゅう@三(サン)屍(シ)虫(チュウ)}という虫が存在して、臓腑を喰うからという。
【用例文】
○伝染病 癆{やまいまつり}ノ病ノ中ニ伝屍ノ一証アリ(病名彙解)○伝屍 媾精〔性交〕ノ時ニ当テ病種ヲ児孫ニ伝ルコト此病ヨリ著キハナシ(扶氏経験遺訓)○Erfenis. 伝屍病(ドゥーフ・ハルマ)○遺伝病 mini{ヱルフェレイケ・ジーキテン}ハ賦生ノ始小{メ}ニ於テ父母ノ病ヲ其体ノ質中ニ稟受セル者ナリ(病学通論)○父母ノ遺伝……悩ム所ノ病ヲ伝賦スルノミナラズ……疾病素因ヲ分与スル故ナリ(察病亀鑑)○hereditary. 遺伝病(医語類聚)○Heredity 形質遺伝mini{(生)inhibitglue}inhibitglue(哲学字彙)○渋(しぶ)谷(や)〔人名〕の眼の大きくて可恐(こは)いのは遺(ゐ)伝(でん)と見(み)えて(尾崎紅葉)
【補説】
今から約200年前の重要な訳語。考え方としては漢方にすでに芽生えていた。

![]() | 東京書籍 「語源海」 JLogosID : 8537149 |