花魁・娼妓
【おいらん】

oiran
【江戸時代】江戸後期、遊里吉原で、最高の位にある娼妓。正式には〈太(た)夫(ゆう){たゆう@太(た)夫(ゆう)}〉の位(宝暦7年・1757以降なくなる)であるが、昔は太夫、のち江戸では〈おいらん〉とよばれる。ただし正式な肩書ではなく、俗称の一種。上方では〈太夫〉、ついで〈天神(てんじん){てんじん@天神(てんじん)}〉といって正式な名称があった。[中国語]花魁、名妓。courtesan, high class prostitute.
【語源解説】
花(華)魁に付き添う禿(かむろ)、新(しん)造(ぞ)など、妹分にあたる女郎から、姉女郎に対して、〈おいらが(姉女郎)〉とよんだ。そのオイラ(わたくし)ガoiragaが訛って、オイランoiranとなった。したがって意味は、先輩女郎のこと。しかし江戸後期、吉原での娼妓の品名として最高位を示すこととなった。草創期や元禄期には存在しない。〈花(華)魁〉の用字は近世中国語の借用。
【用例文】
○モシ花魁(おいらん)へ、あすきっと居(い)続(つづけ)でありんす(咄本)○姉女郎(おいらん)あれば年(とし)廻(ま)有、禿(かぶろ)有ば小(こ)女(ぢょ)子(こ)と云あり(辰己之園)○文謁子(ひねったきゃく)の贈答に名(おい)妓(らん)秘(ひ)して論(ろん)衝(かう)に擬す/惚(ほれ)て手(て)剛(ごは)き客あれば亦怕(おそろ)しく手(て)有(あり)の花(おい)嬢(らん)/全盛娼妓(ぜんせいのおいらん)/{おんなしゅ)(ヲイ)妓(ラン)(洒落本)○花魁のいふよふ、あしたは早く七ツ〔午前四時〕から大門へ(咄本)○あるおいらんが指を切てやったら某客(きゃく)人(じん)大はまりになって(浮世床)○おいらんの情(なさけ)を仇(あだ)でかへすまい/おいらん、おまはんのお心(こころ)いきは、日に幾(いく)たびいはない事はありませんョ(梅暦)○禿、新造等ヨリ己レガ頼トスルハ遊女ヲオラガ所(トコ)ノ太夫子ナド云シ也。後々オラガオラガト云、ツイニオヒラント訛リ今ハ上妓ノ品名ノ如クナリタリ(守貞謾稿)○雄(を)の方(かた)より撰(えら)ぶゆへに雄(をい)擇(らむ)といふ(西洋膝)○花(おい)魁(らん)衆の部屋へ行けば(河竹黙阿弥)○オイラン 花魁 the better class of harlots. (ヘボン)○華(おい)魁(らん)と呼ばれんは気づまりなり(斎藤緑雨)
【補説】
明和9年(1772)刊『学語編』に〈花魁mini{タユウ}〉とみえる。〈花魁〉の表記は江戸期には必ずしも一般的ではない。

![]() | 東京書籍 「語源海」 JLogosID : 8537240 |