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大人しい
【おとなしい】


otonasii

【近代】ききわけがよく、すなおなこと。行儀がよく静かである。[中国語]老実、温順。gentle, well-behaved.

【語源解説】
名詞、〈大人(おとな){おとな@おとな(大人・乙名)}〉を形容詞にして、〈大人し〉とした。文字どおり、大人としてあるべき態度、様子を表現している。いわば、外観的な表現であったが、のちには、いかにも分別があり、立派な言動をもいい、さらにその人物の性格や心など内面にも及んで表現、さらにおとなしい子のように、子どもの状態についても表現。

【用例文】
○けふよりはおとなしくなり給へりや(源氏)○よのつねの十四五よりはおとなしく、みめかたちゆうにおはしければ(平家)○おとなしく〔りっぱな人柄らしく〕もの知りぬべき顔したる神官(徒然草)○おとなしひ(ん)ほどに、はなみにつれていて、わごりょ〔お前〕に花をみせうず(狂言)○おとなしき〔物をわきまえた〕女房たち申やう、……末繁昌してめでたき御ことにて候へ(お伽草子)○二十人マデ子ヲモタレタヲトナシイ太子ゾ(史記抄)○Votonaxij. ヲトナシイ 分別のある重々しい人、常識や知恵をそなえた人/ヲトナゲナイ=幼稚、大人としてふさわしくないことなど/ヲトナシイコトヲユウタ=分別のある成人らしい事などを語った/ヲトナシヤカニ=大人らしく、雄々(おお)しく(日葡辞書)○我がおとなしく寺のぬしにもなりたらば(醒睡笑)○美少女なるが……次第におとなしうなりて、十四五の時は客只はかへさじ/尻(しり)付(つき)ゆたやかに物(もの)越(ごし)衣(い)装(しやう)つきよく姿に位(くらゐ)そなはり心立おとなしく/男(なん)子(し)ひとりもふけぬるにおとなしくなる〔成長する〕事をまちかね/長(をと)郷(なし)(西鶴)○長者(ヲトナシキヒト)、老成人(雑字類編)○おとなしい息子俄にどらに成(川柳)○鶴(つう)〔幼女の名〕は是ほどおとなしいものを。サアサア兄さんも鶴も歌をうたひな(浮世風呂)○うぬが女房は不器量でもいゝから、がうぎと野(や)暮(ぼ)でをとなしくて亭主を大切にして(浮世床)○オトナシキ 長敷mini{〈俗語〉}オトナシクシテオレ=静かにしろ(ヘボン)○内(うち)端(は)で温順(おとなし)く器量も十人(にん)並(なみ)で(二葉亭四迷)○美代子は性来が温厚(おとな)しい質(たち)(坪内逍遥)
【補説】
おとなしいが本来の〈大人〉の意を完全にはなれて、現代語のように用いられるのは、19世紀にはいってであろう。




東京書籍
「語源海」
JLogosID : 8537305