蝙蝠・伏翼
【こうもり】

k^{o}mori
【近代】翼手目の、哺乳動物の総称。昼は暗いところにおり、日暮れとともに活動し昆虫などを食べる。頭部は鼠(ねずみ)に似、前肢が膜を張った翼の形になり飛行する。古名〈かはぼり〉。異名、〈蚊喰鳥〉。[中国語]蝙蝠。bat.
【語源解説】
カハボリは川(カハ)守(マボリ)で、夕方に川辺などを飛びまわって、虫類を食べる益獣というところからの命名。カハ→カワ、マボリ→ボリbori→モリmori(子音交替)。カハボリ→カワモリ→コウモリとなった。12世紀前後はカハ(川)がカワとなるように、ハ行音がワ行音に転じていく現象がみられた。コウモリもその一現象。なお〈蝙蝠傘{こうもりがさ@蝙蝠傘}〉の略称としても用いる。
【用例文】
○蝙蝠 一名、伏翼 mini{和名、加(カ)波(ハ)保(ボ)理(リ)}(和名抄)○かはぼりにくはれて所どころなし(大和)○蝙蝠、顔(カンバ)セヲ遮飛シテ幾千万ト云コトヲ知ラズ(吾妻鏡)○カハモリ({あい}嚢抄)○蝙(ヘン)蝠(フク)mini{カウブリ} 又伏翼ト云フ也(下学集)○蝙蝠(カウモリ)(易節用集)○蝙蝠(かうふり)を○かうむり○かうもりといふやうによむべし(嘉多言)○蝙蝠も出よ浮世の華に鳥(芭蕉)○伏翼(カハホリ)mini{カウモリ、カクヒドリ}(俳題正名)○蝙蝠(かうもり)(早節用集)○蝙蝠に似たと広げる菜漬の葉(川柳)○伏翼 カハホリmini{和名抄}、カフリ、カクヒドリ、カドリmini{江州}(本草)○別品とおたふくとにお揃の蝙蝠(かうもり)を差(さ)させて(森鴎外)
【補説】
いうまでもなく、〈蝙蝠(こうもり)傘(がさ)〉(漱石)はその形がコウモリに似ているところからの命名。中国語の〈蝙(ヘン)蝠(プク){へんぷく@蝙(ヘン)蝠(プク)}〉は羽を広げた長さを形容した言い方から命名。また、〈伏(フク)翼(ヨク){ふくよく@伏(フク)翼(ヨク)}〉は、翼をもつ動物で、昼は屋根のすきまに入って伏すところから。いずれも生態観察による創作。

![]() | 東京書籍 「語源海」 JLogosID : 8537525 |