細胞
【さいぼう】

saib^{o}
【江戸時代】古くは〈さいほう{さいほう}〉。生物体を形づくる基本的な単位。原形質という半流動体の物質でできており、中には細胞核がある。顕微鏡によりこれをみることができる。なお、譬喩的に、職場や地域で、基本的組織体についてもいう。ことに共産党で用いた。[中国語]細胞、成員。cell.
【語源解説】
オランダ語、セルcelの訳語として蘭学者が翻訳、漢字語。さらに根源はラテン語で貯蔵室を意味するcellamによる。江戸後期、西洋植物学書の翻訳により創訳。はじめは〈細胞〉を細胞間隙と誤認したようである。
【用例文】
○細胞〔顕微鏡で見る図〕(植学啓原)○Cell. 空(ソラ)窖(アナ)、寮(リヤウ)〔僧ノ〕、小(シヤウ)室(ヒツ)、細(ホソ)キ管(クダ)〔樹木ノ〕(薩摩辞書)○Cell. 細胞体又空窖(医語類聚)○サイホウ 細包 cell〔植物、動物の〕/Cell. アナ、チイサイヘヤ、ハチノス、サイホウ(ヘボン)○Cell.細胞体〔有機体ノ組織トシテノ〕(和訳字彙)○Cell.(一)小室、密室、密房、(二)細(サイ)胞(ハウ)(模範英和)
【補説】
宇田川榕庵『植学啓原』(天保4年・1833)には、他に、〈花粉、葯、花柱、密槽、柱頭、雄蕋、雌蕋、気孔、卵巣〔子房〕/植(プラント)虫(ヂール)〔plant ziel〕/越(エ)幾(キ)斯(ス)〔extract〕〉など現代用語が翻訳されている。

![]() | 東京書籍 「語源海」 JLogosID : 8537568 |