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宝の持ち腐れ
【たからのもちぐされ】


takara no motigusare

【江戸時代】すぐれた才能がありながら、それを活用する機会のないこと、また積極的にしないことの譬喩。[中国語]空蔵美玉。 unused talent, Pearls cast before swine.

【語源解説】
タカラは古代物語『竹取物語』などに、〈たからゆたかに家ひろき人にぞおはしける〉とあり、古語として存在するが、『日本書紀』に、〈百(オホミ)姓(タカラ)(大(オホ)御(ミ)タカラ)〉、〈まされる多(タ)可(カ)良(ラ)子にしかめやも〉(万葉集)とあるように、民をタカラと考え、田(タ)力(チカラ)→タカラという労働力をいうのが原義であろうか。あるいは〈高(たか)、貴(たか)〉と同根語か。古典に〈宝、財、貨、銀〉(日本書紀、風土記)の漢字をあてるのは、生産されたものへと意識が移ったものであろう。〈宝の持(も)ち腐(ぐさ)り(れ)〉の例は、江戸期にみえる。文字どおり宝をもっていながら、活用せず死蔵しているわけである。漢字、〈寶(宝)〉は、宀(家)と玉、貝(貨幣)と缶(保の意)で、家に大切にしまっておく財宝の意。日本語と根本的に異なる。

【用例文】
○宝、なゝくさの宝七珍也/あたひなき宝(藻塩草)○宝ノ持グサリ(諺苑)○宝の持腐らかし(譬喩尽)○大言ばかり吐いて貧乏して居るが、宝の持(もち)腐(くさり)といふものだネ(滑稽本)○タカラノモチグサリmini{〈諺〉IG}(ヘボン)○技(わ)倆(ざ)はあっても宝の持ち腐れの俗諺(たとえ)の通り(幸田露伴)
【補説】
江戸期の〈宝の持ちぐさり〉が明治期と受けつがれ、のち〈宝の持ちぐされ〉となる。これは小さいようであるが、日本語の史的展開の変化相を証する現象。すなわち、動詞の語形変化は、四段活用→二段活用→一段活用と変化するというのが、古代→近代→現代への展開、その変化を証明する。なお、〈たからの山に入て手を空しくかへり給ふ〉(平家物語)は、『三代実録』(901年成)などにもみえ、本源は仏典『智度論』に、〈信為{レ}手、如上{下}人有{レ}手入上{中}宝山中上{上}、無{レ}信亦如{レ}是入{二}仏法宝山{一}、都無{レ}所{レ}得=信ヲ手ト為ス。人手有レバ宝ノ山ノ中ニ入ルガ如シ……信無ケレバ、亦是ノ如ク仏法ノ宝ノ山ニ入レド都(スベ)テ得ル所無シ〉とみえる。宝は信の譬喩。




東京書籍
「語源海」
JLogosID : 8537744