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戯気・自癡
【たわけ】


tawake

【古代】おろか、またそうした行為をすること、人。冗(じょう)談(だん)などもさす。[中国語]蠢事、蠢貨。tomfoolery.

【語源解説】
古語に、〈不倫な性関係を結ぶこと〉をタハクとみえる。この名詞形がタハケ{たはけ@戯(たは)け}。また、語幹のタハがコトと複合してタハコト{タハコト}の語もある。たとえば『万葉集bnum{17}』に〈およづれ〔まどわし〕の多婆許登(タハゴト)とかも〉とか、〈枉言(たはこと)〉とあって、正気を失って口走る妄言をいう。〈{いうはこおう}mini{久知波志留(クチハシル)又太波己止(タハコト)}〉(新撰字鏡)など(コトは言葉の言(コト))。おそらく〈戯(たわ)むれる〉のタワ(タハ)も同じであろう。『源氏物語』などにも、〈おほやけざまは、少したはれて〔ふざけて〕あざれたる方〔ごくくだけた振る舞いの方〕なりし〉とみえる。こうして、〈不倫行為〉をふくめ、常軌を逸する行為がタハケであった。しかし現代語の〈愚(おろ)か〉の意に集約されるのは、16世紀ごろであろう。発音もタハケ→タワケとハ行音はワ行音に転じた。

【用例文】
○Tauaqe. タワケ(戯け)inhibitglue 馬鹿になる/Tauaqemono. タワケモノ 馬鹿者(日葡辞書)○譫言(タハコト)、妖言(同)(易節用集)○こゝなたわけは(狂言記)○たわけ・たわけ狂ひ(芭蕉)○昨日もたわけが死んだと申す(西鶴)○一寸向(さき)は月夜に挑灯(ちょうちん)。たはけつくすにくらき事なし(好色破邪顕正)○戯言(タハコト)。妖言。狂言。並ニ仝ジ。戯(タハ)気(ケ)、白癡(同)、倥{にんべんどう)(同)(書言字考)○白癡(たわけ)、戯言(たはごと)(早節用集)○やぼに品{おどりじ01)(しなじな)あり、いにしへは古(こ)気(け)と云又のろまと呼ぶ、たわけ、ばか、……べらぼうのるい(洒落本)○鰒(ふぐ)汁(じる)を喰ぬたわけに喰たわけ(川柳)○〔奸 太波久(タハク)〕愚按、俗言に馬鹿といふに同じ、戯楽を極むるは即俗言の馬鹿を尽す也(俚言集覧)○当人は居(ゐ)候になってまごつく程(ほど)な癡呆(たはけ)だから/三馬の大(おほ)癡漢(だわけ)。汝(なんぢ)書賈(ほんや)のやりくりをしらずや(浮世床)○タハケ 戯気〈俗語〉、タハケメ・タハケモノ・オウダハケ。同義語 バカ・アホウ/タハケル奸。オンナニタハケル・タハケタコトヲイウ/タハケキ婬/タハコト戯言(ヘボン)○こんな事で一生(せう)を送れば人は定(さだ)めし大(おほ)白痴(たわけ)と思ふなるべし(樋口一葉)○馬鹿だ、戯(たわ)けだ、何と云はれても仕方は無いは(幸田露伴)
【補説】
古代から明治期まで、一貫して不道徳的な意味のタワケが用いられているが、16世紀ごろより、馬鹿、愚かの意が主となる。




東京書籍
「語源海」
JLogosID : 8537781