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習う・倣う
【ならう】


narau

【古代】1)繰り返し繰り返し知識や物事を身につけ努力をする、馴(なれ)ること。2)何かを手本としてまねること。さらにそれを一つの型にはめこむこと。[中国語]練習、学習。to learn, to imitate, custom.

【語源解説】
古代では、〈倣、学、講〉などの漢字もあてるが、〈(牛馬を)馴(なら)す{ならす@ならす(馴す・平す)}、(地面を)平(なら)す{ならす@ならす(馴す・平す)}〉さらに、〈なれなれしい〉のナレなどいずれもナラ(ウ)と同根語。言動としてはクリカエスことが肝要。たとえば、牛馬を馴すにも、地面を平(たいら)にするのにも、人とつきあうにも、繰リ返シ繰リ返シスルコト。繰返しによって知識を獲得し身につけることができる。文字なども上手に書け、土地も平らにし、人とも親しくなる。これがナラウことの真意。やがて〈ならわし{ならわし}、習慣、習俗〉などとなり、新しい語が派生する。おそらく漢字、〈習(シュウ){シュウ@習(シュウ)}〉も羽と白(日・目)の組み合わせで、鳥とかかわる点、巣立つ前の雛(ひな)鳥(どり)が羽を繰返し繰返し羽ばたくさまなどをあらわすのであろう。

【用例文】
○至貴ヲ尊(みこと)ト曰ヒ、自余ヲ命(みこと)ト曰フ、並ニ美(ミ)挙(コ)等(ト)ト訓ムナリ、下皆此ニ倣(ナラ)ヘ/後人習(ナラ)ヒ読ム/観勒ヲ学(まな)ビ習(ナラ)ハシム(紀)○烏常ニ啄(は)ミ効mini{奈(ナ)良(ラ)比(ヒ)天(テ)}日毎ニ来リ候(サ)毛(モ)良(ラ)不(フ)(霊異記)○久しくあそびきこえてならひたてまつれり(竹取)○たゞ一人を頼もしきものとならひて/女手〔平がな〕を心に入れて習ひしさかりに/御琴などをもならはし聞え給ふ(源氏)○月をも花をも見るより外の事はなきならひに……暁(あかつき)にはまかでぬ(更級)○有ル女人門ニ在(ゐ)マスト告ケレバ世経〔人名〕前ニ習(ナラヒ)テ喜ビテ迷ヒ出テ見レバ(今昔)○ならはぬ旅のくるしさ/びわの曲をならひたてまつりしに(とはず)○何事をも沙(さ)汰(た)せさすべきに文(もん)字(じ)習はざらんわろし/〔寄生(やどり)木(ぎ)を〕もちてつくる。そのほう〔方法〕をならひて〔薬を〕つくりける也/忍びて文など通(かよ)はさむに手(て)書(か)ゝざらんくちをし、手習(なら)ふべし(古本説)○花の散り月の傾くを慕ふならひ〔ならわし、世間一般の人情〕(徒然草)○手ヲ習フ心ナク/習ハヌ旅ノ空(海道記)○異国の習(ならひ)/たゞ田舎(いなか)のいやしきにのみならって/ならはぬひなのすまひ(平家)○花はありて年寄と見ゆる公(こう)案(あん)委(くは)しく口(く)伝(でん)あり習ふべし(風姿花伝)○夙(シク)習(シュウ) 前生之習(ナラワシ)也(下学集)○Narav{o}. ナラゥ 学習する/ナラワヌミチノイワネヲフミ/ナライ=ならわし、ヨニサダメナイワヲトコヲンナノナライヂャ/ナライノミチ=物か物事を学び習う方法/ナラワシ=習慣(日葡辞書)○習(ナラフ)、效(同)、閑(同)(易節用集)○習はぬ経、童(ワラベ)(類船集)○人のならひ〔慣習〕にて……高名のほまれをとるもの也/若衆は思ひながらもケ(か)様の芸〔行儀作法〕はならはれぬ事もあるべし(男色十寸鏡)○ならはんよりなれよ(毛吹草)○〔金(こん)餅(ぺい)糖(とう)作りを〕今は上(かみ)方(かた)にも是を習(なら)ひて弘まりける(西鶴)○越(こし)路(ぢ)の習ひ〔常(つね)〕猶月夜の陰(いん)晴(せい)〔前の晩の月夜が翌日の曇、晴にかかわる〕はかりがたし(芭蕉)○習(ナラフ)、效(同)、傚(同)、講(同)/風(ナラ)俗(ハシ)、習俗(同)/習(ナラス)(書言字考)○母なりし人のおもむけにて、くすしのわざをならひ/もろこしの詩にならひて……しひて分たるもの也(本居宣長)○習(ならふ)(早節用集)○畑(はたけ)で水(すい)練(れん)を習ふ(平賀源内)○習(ナラフ)ハ一生(諺苑)○習(なら)ふより馴(なれ)よ/習(ならひ)先(さき)に不有(あらずんば)懐(くわい)念(ねん)何(なんぞ)可(べんずべ){レ}弁(けんや)/不(なら)習(はぬ)経(きゃう)は難読(よめがたし)(譬喩尽)○習(ならふ) レーレン〔leeren〕(蛮語箋)○ならはねば娘はの字〔恥(はずか)しい〕は出来ぬ也/習らわぬ経を覚へたで孟母こし(川柳)○業(しごと)の習(ならひ)時(じ)分(ぶん)には腰が痛くてからっきり伸(のせ)ねへぜ/〔算(そろ)盤(ばん)を〕いつから習(なら)ふ……一の段を習(なれへ)やァした(浮世床)○八犬伝といふよみ本にならって、その始(す)末(じ)に似ないやうに(梅暦)○ナラウ 習 to study, to learn. ニツポンノコトバヲ習ウ、フエヲフキ習ウ、グワイコクノイフクニ習ロウテコシラエル/習ウヨリナレロmini{〈諺〉IG}(ヘボン)○怠惰(なまけ)がちな習(なら)癖(ひ)をうちすて(坪内逍遥)○お玉(たま)が手(て)習(ならひ)がしたいと云(い)った時(とき)、手(て)本(ほん)などを貸(か)してくれた(森鴎外)○〔バイオリンを〕習はうと思うのだが、よつほど六づかしいものださうだね(漱石)
【補説】
習ウは本来の繰リ返スの意が徹底されて、〈手習い〉などの習ウと別にナライ{ナライ}(習慣、しきたり{しきたり})という語を派生させた。諺の〈習ウヨリナレヨ(ロ)〉も結局、同じことの繰リ返しを意味することになる。




東京書籍
「語源海」
JLogosID : 8537909