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さすが
全訳古語辞典

<形動>《不適・不都合》
そうもいかない。→<一>[1]
やはりどうかと思われる。→<一>[2]
[副]《逆接》そうはいってもやはり。→<二>[1]
《対比》いくらなんでも。→<二>[2]
《当然》当然とはいえやはり。→<二>[3]
なんといってもやはり。→<二>[4]
▲上代の「しかすがに」に代わって中古以降用いられた副詞「さすがに」の形容動詞化した語が「さすがなり」。さらに「に」が省略された「さすが」も副詞として用いられるようになる。もともとの「さすがに」は副詞「さ」に動詞「す」と上代の接続助詞「がに」がついて一語化したもの。形容動詞としては、以前にあった事柄から予想されることと相反する事態が起こったときに用いられる。また、副詞としては、前にあった事柄から予想されることと食い違う場合や予想どおりの場合に用いられる。
<一>


[1]そうはいうもののやはり。そうもいかない。
[例]「『流転三界中』など言ふにも、断ち果ててしものをと思ひ出(い)づるもさすがなりけり」〈源氏・手習〉
[訳]「『恩愛は断つことはできないが断つことが真実の報恩者』と唱えるときに、恩愛を断ってしまったけれどもと思い出すが、そうはいうもののやはり(出家に際し母親への恩愛に浮舟は)泣きなさるなあ」
[2]やはりどうかと思われる。感心しない。
[例]「池の水影見えて、月だに宿るすみかを過ぎむもさすがにて、下(お)り侍りぬかし」〈源氏・帚木〉
[訳]「池の水に月の光が見え、月でさえ泊まる住まいを素通りするのもやはりどうかと思われて、車からおりてしまいましたよ」
<二>
[1]そうはいってもやはり。そうはいうものの。
[例]「つとめては、さすがに人の許さぬことなれば、変はりたらむさま見えんもいとはづかしく」〈源氏・手習〉
[訳]「(出家して晴れ晴れした気持ちの浮舟だが)翌朝は、そうはいってもやはり(周囲の)人が承諾していないことであるので、変わった(出家)姿を見られたらたいそう気がひけて」
[2]いくらなんでも。
[例]「夜討ちなどいふことは、十騎二十騎の私軍(わたくしいくさ)などのことなり。さすがに主上(しゅしゃう)・上皇(しゃうくゎう)の国争ひに、夜討ちなんどしかるべからず」〈保元・上〉
[訳]「夜討ちなどということは、十騎二十騎の個人の戦いですることだ。いくらなんでも天皇や上皇の国をかけた戦いに、夜討ちなどは適当ではない」
[3]当然とはいえやはり。
[例]「さすがにうち泣きてひれ臥し給へれば、いと世づかぬ御ありさまかなと見わづらひぬ」〈源氏・夢浮橋〉
[訳]「(薫(かおる)に出家した姿を見られたらと思い悩んで)当然とはいえやはり(浮舟は)泣いてうつむきなさったので、(周囲の人々も)まったく世慣れないごようすですねえともてあました」
[4]なんといってもやはり。
[例]「さすがに口疾(と)くなどは侍りき」〈源氏・帚木〉
[訳]「なんといってもやはり(学識のある女性なので)返歌の受け答えは本当にすばやくありました」
<参考>「流石」は当て字。