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さび・し
全訳古語辞典

▲寂しく思う・気持ちが荒れてすさんでゆく意の動詞「さぶ(荒ぶ)」が形容詞化した語。上代はそのままの「さぶし」の形が用いられた。欠落や喪失感から心が満たされずもの寂しい状態を表す。


[1]ひっそりとしている。ひっそりしていてさみしい。なくとなく寒々している。
[例]「今、さびしき住まひ、一間(ひとま)の庵(いほり)、みづからこれを愛す」〈方丈〉
[訳]「今、(この)ひっそりとしている住居、一部屋(だけ)の庵、自分はこれを気に入っている」
[2]必要な物がなくてもの足りない。心が満たされず楽しくない。(経済的に)貧しい。
[例]「さぶらふ人々も鈍色(にびいろ)にやつれつつ、さびしうつれづれなる昼つ方、前駆(さき)はなやかに追ふ音して」〈源氏・柏木〉
[訳]「(落葉の宮邸に)お仕えしている女たちも、薄墨色の喪服の地味な身なりをして、心が満たされず楽しくなく所在ない昼ごろに、先払いのはっきりした声がして」
<参考>(1)[2]の用例中の「さびしう」は連用形「さびしく」のウ音便。(2)類義語「わびし」は物事が思いどおりにならず、失望・落胆した気持ちを表す。また「さびし」も「わびし」も経済的に貧しい状態を表すようにもなる。ほかに「さうざうし」「つれづれなり」も類義語である。