小倉山(をぐらやま) 嵐(あらし)の風の 寒ければ 紅葉(もみぢ)の錦(にしき) 着ぬ人ぞなき
【をぐらやまあらしのかぜの】

〔〔和歌〕〕〈大鏡・頼忠、拾遺・秋・二一〇・藤原公任(きんたふ)〉
[訳]「小倉山から吹きおろしてくる激しい山風が肌寒く感じられるので、もみじの錦の衣を着ていない人はいない」
<参考>三船(さんせん)の誉(ほま)れとか、三舟(さんしゅう)の才(さい)とかいわれる、藤原公任の卓越した文芸の才能を語る説話に伝えられた歌としてよく知られている。藤原道長が大堰(おおい)川(→おほゐがは)で船遊びをした際に、漢詩、和歌、管弦の舟を仕立てて、それぞれの道に秀でた人を乗せてその才芸を競わせたが、そのどれにも堪能(たんのう)な公任はどの船に乗るか迷い、結局和歌の船に乗ってこの歌を詠んで絶賛を博したと言う。船遊びの一行の人々に散りかかるもみじを衣服に見立てた趣向である。『拾遺和歌集』の詞書には「◎嵐の山の下(もと)をまかりけるに、紅葉のいたく散り侍りければ」、『公任集』の詞書には「◎法輪寺(ほふりんじ)に詣でたまふ時、嵐山にて」とある。元来は説話とは違う場で詠まれた歌であろう。出典によって本文にも相違があり、『拾遺和歌集』では初句・二句が「朝まだき嵐の山の…」、『公任集』では初句・二句が「朝ぼらけ嵐の山の」、四句が「散るもみぢ葉を」となっている。

![]() | 東京書籍 「全訳古語辞典」 JLogosID : 5090451 |




